クリーニング豆知識

第八十七回:「グランツリーの不振」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第八十七回は、以前紹介した「グランツリー武蔵小杉」について


以前にこのコラムで紹介した

「グランツリー武蔵小杉」
ですが、
衣料品の販売が予想を下回っている、
という記事が、流通新聞に掲載されていました

その記事の中で触れられていましたが、
不振の原因は
「周辺の住民に、そこまで余裕はなかった」との事です


どういう事かと言うと、グランツリーは場所的に、
武蔵小杉のタワーマンションに住んでいる人、
および、周辺地域の住民をメインの客層として想定していた訳ですが

タワーマンションに住んでいる人は、
「マンションのローン返済に精一杯で、
そこまで余裕はない」
という場合が多いようです


また、武蔵小杉自体、富裕層の集まる街と言う訳ではなく、
どちらかと言うと庶民的な街であるため、
渋谷や銀座に店舗を構えるような、衣料品店が出店した所で、
そこまでの大きな需要はなかった、と言う所のようです

以前のコラムでも触れましたが、
やはり川崎にある
「ラゾーナ川崎」の存在は大きく、
グランツリーが出店したからと言って、
周辺地域の人達がこぞって来店する程ではなかったようです

電気店もホームセンターもないなら、
グランツリーでなく、一か所で色々揃うラゾーナに行こう、
となるのは自然の流れと言えます


グランツリーが現在の店舗内容を維持している限り、
この状況が劇的に変わる事はありません


そのため、ユニクロやg.uのような、低価格帯の衣料品店の出店や、
日本初出店のようなお店を積極的に誘致するか、
既にある自社ブランド「good day」を相当強化しないと厳しいでしょう

ただしユニクロは、歩いて3分の距離にある東急スクエアに、
比較的大きな店舗を既に構えているため、
グランツリーに出店すると、そちらの店舗と競合してしまうリスクがあります


「売る側」から見ると、この状況は
「既に強力なライバルが存在する地域に出店すると、どうなるか」

と言う点で、非常に興味深いと思います

独自色を打ち出すのか、
あるいはラゾーナにイメージを寄せて行くのか

自社ブランドか、他社の出店に頼るのか、今後もグランツリーは、
難しい判断を迫られる事になりそうです