クリーニング豆知識

第八十八回:「スリムフィットのリスク」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第八十八回は、「スリムフィット」について


エリのラベルの部分に、
「slim fit」などの表記のある、
比較的タイトなデザインのワイシャツ

メーカーによって呼び方は様々ですが、
すっかり定着した印象を受けます


しかし、これだけ定着したにもかかわらず、

@ワイシャツの仕上げの機械には
収まるようなデザインではないため、
機械仕上げではシワが寄る場合がある

Aタイトなデザインであるが故に、肩や背中など、
着用していて力のかかる部分が、比較的早く擦り切れて来る

・・・というデメリットについては、あまり知られていません


そして当然の事ですが、消費者は、
購入後にそのような事態が発生するまで、
その特性に気付く事はありません

購入する前にクリーニング、およびプレスした状態を
確認する事は出来ないため、当然です


クリーニング業に携わる側からすると、特殊な形状の衣類は、
「どう仕上げて良いのか分からない」
という事が多々あります

何をどう仕上げてもシワが寄る、
畳んでもハンガーに吊るしても固定出来ない、
という衣類もあります


ワイシャツに限らず、
スリムフィットのブラウスやスーツに関しても言える事ですが、
比較的タイトなデザインの衣類は、

力のかかる部分が傷みやすく、シワが寄りやすく、
クリーニング、およびプレスにおいてもシワが伸びにくい、


・・・というリスクがあります
また、生地に余裕がないため、左右に引っ張られる事により、
ボタンにも力がかかるため、ボタンが取れやすい場合もあります


男女の区別なく、
「細く見せたい」という需要に応える衣類は、
今後も拡大を続けるでしょう

ただし、
シワが寄りやすい、生地が傷みやすい
というリスクがある事は確かであり

気に入ったデザインだからと言って、飛びつくのではなく、
良く考えて購入する事を、強くお勧めします