クリーニング豆知識

第八十三回:「13万円のウォークマン」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第八十三回は、「売る側」から見た高額商品について


以前に、「7万円のウォークマン」という題名の回がありました
2013年の終わりに発売された、「walkman NW-ZX」
現在は7万円弱程度にまで値下がりしていますが、
出始めの当初は8万円近い価格でした

そして2015年2月、
後継機種である「NW-ZX2」が発売されます
その価格、13万円

どちらかと言うと、後継機種ではなく上位機種であり、
初代ZXは今後も製造・販売されるようです

以前に流通新聞で、初代ZXが発売後、
長期間に渡って品薄となっていた、
という記事がありました

品薄になると言う事は、
恐らくソニー側にとってもこの動きは予想外であった、
と言う事になります


「売る側」としてこの現象を見た場合、
「高額商品の後継機種を、更に高値で発売する」
という対応は、自信の表れです


もし、初代ZXの売上が想定を下回った場合、

@機能は据え置き、あるいは多少加えて、
価格は少し下げる、あるいは価格も据え置き

A「この価格帯の商品は売れない」と判断し、
後継機種は作らず、売れ筋の機種に集中する

・・・と言った対応が考えられます
それを初代の2倍近い価格で販売すると言う事は

「この価格でも売れる。ニーズはある」
という判断の表れである、と考えます


以前から言われている事ですが、
現在は
「消費の二極化」が進んでいます

食料品や日用品など、
日常的に購入するものに関する出費は徹底的に抑え、
自分の好きな分野、あるいはどうしても必要だと思う分野に対しては、
(限度はあるにしても)お金を惜しまない、という傾向があります

今、苦しいのは、
この
「徹底的に節約する」という際の対象にも

「この分野にはお金を惜しまない」
という際の対象にもならない業種・業態です


「ウチはこういう強みがあります。
この事に関して関心がありましたら、是非ウチにご相談ください」

・・・と胸を張って言える分野を作る、と言う事を、
「売る側」としてはいつも考えています


さて、NW-ZX2ですが、製品そのものが素晴らしかった場合、
高額商品(特に嗜好品)に良く見られる

@「この分野にはお金を惜しまない」と言う層が購入する
(この層の人達を、
「アーリーアダプター」と言います)

A「興味はあるが飛びつくのは怖い」という層が、
@の人達がAmazonや価格,comに投稿したレビューを読み、
購入するかどうかを決める

Bもし、@の層のレビューが絶賛の声ばかりであった場合、
Aの層がこぞって購入し、あまり興味の無かった層まで
「そこまで良い商品なら、買ってみようかな」と考え、品薄になる

・・・と言うケースになります
@とAの間の期間は製品の価格やジャンルによって異なりますが、
早ければ2〜3日程度でしょう


「2015年初頭の時点で、いくら性能が優れているとは言え、
13万円のウォークマンが売れるのか?」

と言う点で、非常に興味深いと思います


追記

発売後、アマゾンや価格.comでの評判も上々ですが、
極端な品薄にはならなかったようです

ただ、高級ポータブルオーディオとしての地位を確立し、
今後もソニーはこの価格帯のモデルの開発を継続するものと思われます
(後に、ZX-100を発売しました)