第八十四回:「事実を二つ並べる」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第八十四回は、「広告の表現」について
ツイッターの共同創業者の一人であるビズ・ストーンが、
著書「ツイッターで学んだいちばんたいせつなこと」で、
非常に興味深い事を述べていました
彼は以前、「今日は誕生日。僕は30代!」とツイートしました
普通、「ああ、この人は今日で30才を迎えたのかな」と思います
しかし、この日、
ビズ・ストーンは35才になりました
嘘を付いている訳ではありません
しかし、相手が受けるイメージ(今日で30才になった)とは違います
彼は、「事実を2つ並べると、嘘になる」と述べています
そしてこの指摘は、
「売る側」の広告事情を、実に的確に表現していると思います
消費税が8%に上がる直前に一部の小売店が行った、
『「まとめ買いは、増税前がお得!」と消費者の購買意欲を煽り、
セール価格ではない、ほぼ通常価格で売る』というやり方も同じです
「まとめ買いは、増税前がお得」は事実
ただし、セール価格ではない、とは一言も言っていません
このような「嘘は言っていない広告」で、
非常に分かりやすいのが、携帯電話各社のパンフレットです
嘘は書いていませんが、
自分にとって都合の悪い部分に関しては、
言う必要がないものは言わない。
どうしても言う必要があるものは、
出来るだけ目立たないよう、小さな字で書く
携帯電話各社では以前から、スマートフォンの普及による、
パケット通信量の増大に頭を悩ませて来ました
あまり知られていない事ですが、一部のヘビーユーザーに対しては、
「一か月の通信量が一定を超えると、通信速度が下がる」
という強硬措置とも言える対応をしていた程です
そこで携帯電話各社は、「新料金プラン」を考えました
「こちらに変更するとおトクですよ!」と盛んにアピールします
確かにおトクになる場合もあるため、嘘は言っていません
ただし、「パケット定額制」の新規受付を終了しました。こっそりと
そして、新料金プランは、基本的にパケット定額制ではありません
この、「こちらの方がおトクですよ!」
と言って(自分にとって都合の良い)新しい方式へと誘導し、
従来のやり方の新規受付は廃止する、という手法は、
携帯電話各社に限らず、サービス業ではよくあります
パケット通信料の増大は携帯電話各社にとって、
見過ごす事の出来ない問題であり、
新料金プランへの誘導は、仕方のない事ではあると思います
携帯電話各社は、頻繁にこのような手法を行うため、
「新サービス受付開始!」と大々的な発表があった場合
乗せられるままに新サービスに変更するのではなく、
「このサービスの狙いは何だろう」と考え
自分にとってプラスの面が大きいなら乗る、
マイナス面が見過ごせないなら乗らない、
と言う対応が賢いやり方だと思います