第二百回:「プレス圧」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百回は、「プレス圧の強弱」について
プレス圧
・・・と言われても、ほとんどの方が分からないと思います
以前、第九十九回:「テカる」で取り上げたことがありますが、
これはプレスの際の圧力のことです
第九十九回で説明したのは、
プレス圧が強い ⇒ テカる
・・・と言う現象のことでした
プレス圧は、クリーニング業者側が
ほとんど説明することのない要素であり、
しかし仕上げの品質に大きく関わる、とても大事なことです
基本的に、起毛製品や礼服のズボンを、
プレス圧を強い設定でプレスすると、
「テカり」が発生します
この状態は、アイロンで蒸気を当てた後、
手やアイロンで伸ばして「寝た」毛を「起こして」あげると、
大抵の場合はかなり元通りになります
また、セーターやブレザーなど、
立体的なデザインの衣類に、
アイロンによる仕上げを行う衣類でも
プレス圧を強く、つまり「しっかり当てる」と、
毛が寝た状態になり、テカりが発生する場合が多々あります
クリーニング各社ともに、
「作業マニュアル」のようなものがあり、
礼服や起毛製品のプレス圧は弱く
綿や毛と言った、丈夫な素材の衣類は
プレス圧は強く設定を変える・・・のように、
しっかりとマニュアル化されている会社もあると思います
ただ、「マニュアル化されている」ことと、
「作業員が、マニュアル通りに作業をすること」は別です
マニュアルでは、『プレス圧の設定を切り替えて作業する』、
と言う手順になっていたとしても、実際に作業をする人が、
ついうっかり忘れてしまうかもしれません
また、いつもはマニュアル通りにしっかり作業をする人でも
心配事があったり、体調が悪かったりして、
いつも通りの作業を出来ないことがあるかもしれません
同じクリーニング店に同じ服を出したのに、
何だか前回と違うな・・・と言うことは
大抵の場合、作業している人が違う、
あるいは作業している人の『状態』が違うため発生します
作業した人、あるいは会社の、
プレス圧の特徴がハッキリと出るのが、
黒や紺と言った、濃色のポリエステルの衣類です
プレス圧を強く、アイロンを押し付けるようにかけると、
その部分が分かりやすくテカります
ズボンの場合、プレス圧が強い設定で
そのような素材のズボンにプレスすると
「ここの部分にプレス機で線を付けた」と言うことが、
ハッキリと分かる程度にテカりが発生します
この「プレス圧の特徴」は、
クリーニング各社によって結構、違います
しっかりとシワを伸ばそうとすると、
テカりが発生する
テカりが発生していないけれど、
細かいシワが残っている・・・など
どの会社のプレス圧が正しいと言うことはなく、
会社のマニュアルと作業した人が
「どの部分を重要視するか」が結構、出ています
一度、衣類をクリーニングに出す必要がありますが、
クリーニング店を選ぶ際、
この「プレス圧」も参考にしてみて下さい
なお、当社は「テカらない」重視です
クリーニング店での仕上げだけでなく、
家庭でアイロンをかける際にも
柔らかい素材に強くアイロンを当てると、
テカりが発生します
その場合、まずは伸ばしたい部分に蒸気をあてて、
アイロンや手で軽く伸ばすようにしてみて下さい
テカりは一度発生すると、
中々取れない場合があります
ご注意下さい