バイクで四国八十八ケ所巡り 写真はこちら

       一番札所 、竺和山霊山寺(徳島県鳴門市)           

本文は、’96年から’97年にかけて大型バイクで四国八十八ケ所を巡り、その道中記を「こころの旅路」としてツーリングレポート

風にまとめたものです。

都合3回四国に渡りましたが、まずは初年度編から。


 
はじめに


昨年の夏、知人が四国八十八ケ所をお参りしたと聞き、私は単車で「四国八十八ケ所めぐり」をしてみようと決意、

まず初年度の準備を進めることにした。

四国八十八ケ所めぐり。それは約1200年の昔から続いている信仰の旅である。

弘法大師は発心の阿波(徳島県)23ケ寺、修行の土佐(高知県)16ケ寺、菩薩の伊予(愛媛県)26ケ寺、涅槃の讃岐(香川県)

23ケ寺を定めた。

吉野川沿いからはじまり室戸、足摺岬から高山、石鎚山を経て、瀬戸の海辺まで起伏と変化に富んだルート。

昔、このルートを「お遍路さん」は白衣に金剛杖をついて歩いてたどった。いま、車でも回れる便利な遍路となったが、祈る心は昔も

今も変わらない。心のやすらぎを求めてたどる"こころの旅路"である。

 

フェリー乗船・・・・・

 

7月29日(日)快晴

 いよいよ出発の日。この日に備えいろいろな準備をしてきた。

 何と言っても、800ccVツインのネイキッドから長距離に楽なツアラータイプの大型車に乗り換えるため昨秋から車種選定に悩ん

 だことが一番であろう。

 他社の1000ccクラスも検討したが、結局は専門誌の試乗記事を参考にしてヤマハのXJR1200Rに決定、4月初旬に納車と

 なり順調に慣らし運転も完了した。

 四国の道はせまい。その上今回のツーリングでは、山寺を参拝する。林道のようなせまく足場の悪いところでの単車の取り回し

 も、十分考えておかなくてはならない。

 そのため、基本にかえり「8の字」を毎週たっぷりと練習した。 前車VX800でみられたUターンで内側に切れ込む特有のクセ等

 はXJR1200Rでは、感じられないし、アクセル微開時のトルク変化が穏やかなのでUターンも楽。

  Uターン練習中

 見た目に大柄な車体も、走り出せば何の不安も無いし、ここぞというときの、強烈な加速としなやかなブレーキはライダーに大き

 な安心感を与えてくれる。但し、やはり押したり引いたりの取り回しはコツをつかむまで不安がつきまとう。重量車を駐車する時は

 次に走りだす時のことを考えて、場所や向きを決めておくことが、賢い方法だと思っている。

 前置きはこのくらいにしておこう。

 主要な荷物は既に送ってある ので今日は東京有明埠頭から、19:10に出港する徳島行きオーシャンフェリーに乗船するのみ。

 少し早いが、17時過ぎに自宅を出発、首都高を走りフェリー乗り場に到着、乗船待ちの単車は約20台と思ったより少ない。

 キャンプ用品を満載したオフ車がほとんど。皆20代と思われる若者ばかり。

  出発の日

 ドラが鳴りいよいよ出港、これから約17時間の船旅である。

 

 

徳島へ・・・・・

 

7月29日(月)快晴

 12:30、定刻に徳島港に入港。

 昼食後、近くの正木ダム、慈眼寺、大川高原を回ってくる。

  正木ダム

 本日の走行110Km
 

四国八十八ヶ所めぐりスタート・・・・・

 

7月30日(火)快晴

 6時起床、快晴で暑くなりそうである。7時に出発、今日は鳴門市にある一番札所、竺和山霊山寺から回る予定。

 8時過ぎに到着し、木陰に愛車を停め、まず最初に「納経帖」と「案内図」を購入、ここからの各寺でこの「納経帖」に本尊の心印

 を受けることになる 。

 ここは始発寺、遍路はここで装束を整え、不殺生、不妄語、不邪淫などの十善戒を授けられて出発する。

 今まで、無信仰、無芸大食、有言不実行の私もいささか神妙な気持ちでお参りする。

 65歳くらいの夫婦が、フュージョンのタンデムでお参りに来ている。

 聞こえてくる会話もシンプルで枯れていてなかなかいい味。

 それにしても午前中からこの暑さ、信号待ちで止まろうものなら股下の1200ccエンジンからの熱気で汗がどっと吹き出てくる。

 しかし市街地でも愛車のエンジンは熱ダレなんかまったく感じさせない。

 XJRはオイル消費が多いと言われているが、今まで1500Kmで300cc程度補給しただけ。

 これもAGIPのリッター4、000円の最高級油のおかげか?

  10番切幡寺

 10番札所までは、比較的接近した場所に有り、乗ったり降りたり、ヘルメットもかぶったりぬいだり。

 風通しの良いメッシュのヘルメットはないものか。生え際前線が急速に後退しつつある私は、ヘルメットの中のムレが

 一番気になるのだ。

 太陽が真上に来ると、駐車するにも木陰が見つからない。そんな時は、持参した白いタオルをタンクからシートに掛けておくと、

 次に跨る時の気分が違う。

 12番札所は海抜800mの山の中、こんなところにこんな大きな寺をしかも機動力の無い時代にと感心する。

 昨年新築した我が家の3階建は 、電動工具を駆使した「近代的作り」であるが、この寺が経た年数の数十分の一ももつまい。

 現在の家はローン期間と耐用年数がほぼ同じということは、ずっとローンから開放されないことじゃないか。  ああ、合掌。

 今日5本目のポカリスエットを飲み、気を取り直して次に向かう。

 14番から17番までは徳島市内で、そんなに時間は掛からない。

 「お納経」の受付時間はどのお寺も朝7時から夕方5時までとなっている。

 今日はどうしても19番までは回っておきたい。途中スピードアップしたので5時少し前に19番札所、橋池山立江寺に到着できた。

  19番札所、橋池山立江寺

 水子供養で有名なお寺であることを知り、私はなぜか若い頃の東南アジア長期出張を思い出したのだった。

 ここは八十八ヶ所に四つある関所寺の一つでもあり、諸人の理非曲直を見分ける関所である。ために不義密通とか、あるいは

 邪悪の心を抱いたものには天罰を下すと言われている、と書いてある。 

 思わず、ここだけパスしようかな、なんてちょっと思ってしまう私であった。

 この時には、3日後に恐ろしい場面に遭遇するとは夢にも思っていなかったのだが。・・・・

 お参りの後、30分程で実家に到着。

 ビールをしこたま飲んだ後に、明日のルートを検討する。

 20番、21番、22番は実家から近いので、今回の最終日にしよう。

 高知県は広く、実家を拠点に日帰りするのはどうも無理なので、途中で1泊必要となろう。ここまで決めて就寝。

 本日の走行 250Km

 

一路室戸岬へ・・・・・

 

7月31日(水)快晴

 今日は行けるところまで行ってそこに宿泊することにし、6時過ぎに出発。

 23番札所の医王山薬王寺のお参りを済ませた後は、一路室戸岬を目指す。

 薬王寺を出るとすぐ「南阿波サンライン」という13Kmほどの格好のワインディングがある。

 左に雄大な太平洋が見え隠れする見晴らしの良い、交通量の極めて少ないルートである。

 以前は有料道路であったが今は無料。

 愛車XJRも絶好調、コーナーのブレーキングと立ち上がり加速を十分楽しむ。ここはお薦め。

 牟岐で55号線に合流し、室戸阿南海岸国定公園に指定された青い澄んだ海を左に見ながら快適な一般道路での高速走行(?)

 を楽しむ。

 室戸海岸に近づくと、海岸の巨岩に打ち寄せる波が豪快に砕け、真っ白い絨毯を敷いたような泡が一面に広がっている。

 小さく砕けた泡は空中に舞い上がり海岸沿いの55号線をモヤのように覆う。ヘルメットのシールドも潮で濡れ、乾いたタオルで

 拭くだけでは簡単に視界は回復しない。

 10時前に室戸岬に到着。

  室戸岬付近

 24番札所から28番札所まで急いで回る。

 このあたり、暑さのため地図の確認が面倒になりつい標識だけに頼り、29番札所を見落とす。高知市内に入ったところで見落とし

 に気付き、戻る。この時の時間ロスが大きかった。

 明日、足摺岬まで行って実家まで戻るには、今日中に中村市までは入っておきたい。先にも書いたが、「お納経」の受付は5時

 までである。1寺でも残すと、次回の時間的負担が大きい。

 結局35番札所と37番札所は帰路に寄ることとし、本日のお参りは34番札所が最後となった。

 後はひたすら、中村市まで走るのみ。

 XJRは座面も広く、ワイラックスのお陰か、お尻が痛くなることもない。しかし、肩から首にかけての筋肉が疲れる。

 走りながら何度も強く肩をすぼめるようにしたあと、一挙に力を抜く動作を繰り返し「コリ」をほぐす。

 ところで、高知県内はレギュラーガソリンが113円と高い。都内では95円だし、徳島では103円である。

 19時前、中村市に入り市街地に向かう。 川を渡るとすぐビジネスホテル「清流」のネオンが見え、今日の宿をここに決める。

 私は仕事の関係で頻繁に全国各地に出張しているせいか、宿は必然的にビジネスホテルになってしまう。

 部屋があることを確認し、駐車場に愛車を移動する。先客で春日部ナンバーのアメリカンが駐車している。

 このあたりで関東ナンバーのバイクを見かけることは少ない。どんなライダーだろうか。

 キーをもらいすぐシャワーを浴び、着替える。小走りでビールの飲める店を探し飛び込む。うーっ、うまい。

 部屋に戻りテレビをつけオリンピックの結果を見る。メダルの期待はしていないが、それでも日本人選手の成績にがっかりした。

 その後、ツインベッドの片側一杯に地図を広げ、明日のルートを確認する。

 明日は距離があるし、今日は早めに寝て、明朝6時前に出発しよう。

 今回はツーリングが主目的の八十八ヶ所めぐりのはずであったが、様々な人が様々な格好と交通手段でお参りしているところを

 見たり、実際に話をしてみると不思議なくらい穏やかで、親切なことに気が付いてきた。

 お参りのきっかけは、親族の供養のためであったり、定年を節目に夫婦で回っていたりとこれもさまざまであろうが、

 八十八ヶ所めぐりの中盤にさしかかると、皆それぞれ「遍路の一歩一歩が人との出会い」であることに気付き、それこそが価値

 あるものに思えてくるのだろうか。

 本日の走行距離 410Km

 

足摺岬で豪快な太平洋を見る・・・・・

 

8月1日(木)快晴

 4時40分頃私は自然に目が覚めた。

 朝食は後回しとして、5時40分に出発。

 足摺岬の手前で「備長炭直売」との看板。ちょっと待て、直売というからには生産しているのだろう。

 備長炭とは、姥女樫を材料とした熊野産の良質炭のことのはず。ちなみに紀伊国田辺の備後屋長右衛門が創製。

 地域が違うのではないかい。小さなことでも気になる私なのである。

 6時30分に足摺岬に到着。

  足摺岬

 「お納経」の受付は7時からなので、少し時間がある。足摺岬の展望台に行ってみる。 断崖の上に灯台があり、そこまでは

 行けるが海岸には降りられない。

 ここは、室戸岬に比べるとさらに豪快である。太平洋が丸く見えるらしいが、早朝なのでちょっと霞んでおり、その事実は確認

 できなかった。

 7時ちょっと前に38番札所金剛福寺が開門、一番にお参りを済ませ来た道とは逆廻りに足摺宇和海国立公園のルートを楽しむ。

 景色の良いルートである。

 途中、サンゴ博物館や海中展望台もあるが、寄っている時間が無い。いつかまたと思いつつ通過する。その後39番、40番、

 と廻り、その後昨日の残り37番、35番をお参りした。

 これから実家のある徳島まで帰るわけであるがまだ相当距離がある。

 来る時にも気が付いていたけども南国市の付近で「エチオピア饅頭」なるものの看板が出ていた。どんなものなんだろう。

 買ってみるほどではないが気になる看板ではあった。

  エチオピア饅頭の看板

 先の「備長炭直売」といい、私はよほどわき見運転をしているらしいと気が付く。気を付けよう。

 私は単車に乗るにあたって、家族に心配をかけぬよう次のことにこだわるようにしている。

 @日没後は極力走らない。

 A効果のほどは分からないが、万が一を考慮しプロテクターを装着する。

 今回このプロテクター(脊椎パッド)が、暑さを倍加させている。

 途中での昼食も冷たいものが欲しくなり、「ひやしざるうどん」を注文、これがうまかった。四国はどこでもうどんがうまい。

 55号線を徳島に向いひたすら走る。室戸岬を過ぎたあたりで、向こうから大きな荷物を積んだ2台の自転車が登ってくる。

 「がんばれよ」と思わず手を挙げると、後ろの一人が顔を上げ、ニコッと笑った。若い女性だった。

 なぜか美しかった。

 牟岐からはまたあの「南阿波サンライン」に入り、夕暮れのワインディングを楽しむ。

 阿南市に入ったところで、7時頃帰着の予定を連絡。

 一時間ほどして予定通り日没前に到着。

 今日はよく走った。明日20番、21番、22番と回れば、1番から40番までお参りを済ませたことになる。   

 本日の走行 530Km

 

心中事件に遭遇!!

 

8月2日(金)快晴

 今日は3ヶ所だけ、しかも近いので午前中に帰ってこれそうである。午後は明日帰る荷物の整理をしよう。

 7時10分頃出発。この後まもなく、あの恐ろしい場面に遭遇するとは。・・・・・

 20番札所に向かうため県道を右折、みかん畑の間を縫うように登っていく。

 前方に一人の「歩き遍路」、諸寺をあるいてお参りするお遍路さんである。

 せまい道なので、徐行し追い越してゆく。 朝の林間のさわやかさを楽しむようにスローペースで登っていると、

 後ろで車のクラクション、左に避けてその車に道を譲る。

 少し行くと登り左カーブ、車が左側に停車している。さらにその近くの道端に男女が向かい合っている!!

 早朝からこんな所で一体何をしているのかと思いつつ見ると、何と・・・

 二人の首には間にある木の枝から太いロープが・・・・・。しかも女性はこちらの道路のほうを向いている。

 心中現場である!!

 瞬間、背筋に悪寒が走り、総身が粟立つのを覚えた。

 目をそらした瞬間、女性の手が動いたような気もする。

 ヘルメットの中で小さな声をあげながら、反射的に右手がスロットルを捻っていた。早く知らせなければと、境内の駐車場に急いだ。

 ここからは近いはずなのにお寺までが遠く感じる。

 お寺に知らせると、ちょっと前に、参拝にきた年配のグループが第一発見者だったようで、警察に連絡したところだという。

 しかし、ここに来る道は一本。

 実家に帰るにも、21番札所に行くにも、あの現場をもう一度通らなければならない。

 狭い山道のすぐ脇の現場を見ないように通過する事は不可能。

 10分程して、意を決して降り始める。いよいよもうひとつコーナーを曲がるとあの現場である。

 すると雑木の隙間に赤いランプが見えた。 パトカーが到着したのである。パトカーはうまく現場を隠してくれていた。

  ここが20番札所,鶴林寺。この手前の参道で事件に遭遇!!

 21番札所に向かいながら思った。病気と闘いながら頑張っている人やボランティアに力を注いでいる人もいる。

 そんな中で、あの二人に一体何があって、あんな選択をしたんだろう。

 残された家族や知人、警察やお寺の人達と、彼らの考えもしなかった多数の人達に大きな迷惑を与えたのは事実である。

 彼らが選択した方法は自分達の事しか考えない「究極のわがまま」ではないだろうか。

 お寺の人は、諸寺をお参りしているお遍路さんに発見されたのはせめてもの救いではないかと言っていた。

 私もそう思う。       合掌。

 何とも複雑な思いのまま、次ぎに向かった。

 21番札所、舎心山太龍寺へはロープウェイを使う。

 ロープウェイ内で岡山の公務員夫婦に会う。

 今回は4輪で来ているがゴールドウィングに乗っているそうな。一緒にお参りしながら、単車談義に花が咲く。

 職場の若者ともツーリングに行く由。

 ここは広大な寺領全域を千余年の樹齢を算する巨杉が覆っているスケールの壮大な寺である。

 「ミニ八十八ヶ所めぐり」も出来るので忙しい人はここへどうぞ。

 この後、22番札所を廻ってお昼前に帰着。

 昼食後、荷物の整理を行なったあと、愛車を洗車し、室戸、足摺でもらった太平洋の塩分を落とす。

 本日の走行 70Km

 

サヨウナラ、四国・・・・・

 

8月3日(土)快晴

 今回のツーリングはすばらしい天気に恵まれた。

 この4日間で飲んだポカリスエットやウーロン茶は合計何本になったろうか。

 ここに書ききれなかったけれどいろいろな人と話しをすることが出来た。

 納経帖を持っているだけでお遍路さんが挨拶してくれる。

 私の服装は一般のお遍路さんとは異質だけども、その仲間意識が有難たかった。

 一方で、すれ違うほとんどのライダーがサインを返してくれたのも気分がよかった。

 (最近、関東近辺ではツーリングライダー同士のサイン交換がめっきり少なくなったと思っているのは私だけだろうか?)

 来年また5月の連休に来よう。

 まだ伊予と讃岐が残っている。

 11時徳島発の東京行きフェリーに乗船。

 一等寝台の同じ部屋で実家が松山というZZR1100氏に会う。

 船内で昼食の後すぐ眠る。いくつになっても眠ることが体力回復の源である。

 明後日から、また仕事だ。

 本日の走行 20Km

 

無事我が家帰着・・・・・

 

8月4日(日)霧雨

 朝5時東京有明埠頭に着岸。

 霧雨の中、首都高を走り無事自宅に到着。

 玄関を開けると、3匹の猫が迎えにきてくれた。家族はまだ寝ているようだ。

 「お父さん」の「こころの旅路」に協力してくれた家族のみんな、有り難う。

 シャワーの後、心地好い疲労感でまた眠る。

 


総走行距離 1、380Km     

四国内は全て一般道路を使用。

平均燃費  17Km/L  

総費用 11万円

(フェリー往復5万円、納経・駐車料2万円、宿泊・食事・お土産3万円、燃料約8千円、その他)

 


 

結願ツーリング 

 


はじめに

1996年の夏からはじめた四国八十八ヶ所巡り。

都合3回、四国を訪れこの度やっと八十八ヶ所巡りを「無事に結願」させることが出来ました。

以下、今年の5月、7月の2回の巡礼をツーリングレポートとしてまとめてみました。


ふたたび四国八十八ヶ所巡りへ・・・・・

 

昨年の夏に、スタンプラリーのような軽い気持ちで始めた単車での四国八十八ヶ所巡り。

心中事件に遭遇するなどのハプニングもあったが、何といっても全国各地から御参りに来ている見知らぬ人との出会いが新鮮で、

忘れられなかった。

昨夏は徳島県、高知県を廻り1番札所霊山寺から40番札所観自在寺まで御参りを済ませている。

今年は愛媛県の41番札所龍光寺から再開である。

 

出発の日・・・・・


平成9年4月26日(土)

 昨年と同じ東九オーシャンフェリーで東京有明埠頭から徳島に向け、約18時間の船旅である。

  フェリー乗り場には相変わらず、オフロード車が多い。私も5年ほど前にオフロード車でこのフェリーを利用して、四国に渡り

 剣山スーパー林道を走ったことがある。   

 今回の愛車は、昨年4月に乗換えたXJR1200Rで現在の走行距離は8、033Kmとなっている。

 四国八十八ヶ所を御参りする人は、年間に約9万人、その内歩いて御参りする人は約千人だという。

 普通は自家用車で、老人の団体はバスまたはタクシーをチャーターして御参りをしているようだ。

 単車で廻っている人は少ない部類であろう。

 連続で御参りすれば約1、400Km、車で8日間。徒歩では健脚で40日間かかるという。

 私のような会社員は、まとめて休みが取れないので何回かに分けて御参りするのが普通。

 しかし、途中で挫折しすべてのお寺を廻ることが出来ずに「結願」のよろこびを味わえな

 い人もいるそうな。

 「無事に結願する」ことを念じ、船上の人となる。

 本日の走行 30Km

 

四国上陸・・・・・

 

平成9年4月27日(日)

 午後1時に予定通り徳島港入港。

 本日は徳島泊まり。

 本日の走行 20Km
  
平成9年4月28日(月)

 昨夜から強い雨が降っている。

 今日は、徳島から41番札所龍光寺のある愛媛県宇和島市まで走る予定。

 四国は高速道路の整備が遅れており、徳島から宇和島まで行くには一般国道を利用する。

 朝6時前に出発する予定であったが、雨が強すぎるのでしばらく様子を見る。

 10時近くになって、ようやく雨足が弱くなり、「天気は西から回復の模様」とのTVの天気予報を信じて、レインスーツを着込み出発。

 国道55号線に乗り、高知方面に向けて走るが濡れた路面ではスピードも控え目に。

 すれ違う大型トラックの水しぶきを浴びながら、昨夏の快晴、猛暑がなつかしくなる。

 悪天候のためと、昨年とは違う道を走りたくなり室戸岬をバイパスする道を選択、55号線を右に折れる。

 この道が予想以上に狭く、スローダウンを余儀なくされる。

 見通しが悪い上、道幅が狭くコーナリングを楽しむどころではない。

 失敗したなと思ったが、戻るのも時間のロスである。

 この道を1時間ほど走り、ふたたび55号線に合流。

 途中薄日が差したり、雨になったりで、2度ほどレインスーツを脱いだり着たり。

 高知市内を過ぎ、須崎からは国道197号線に入る。

 この道は、四国の道にしては車幅もそこそこ有り、交通量が極めて少なく、気持ち良く飛ばせた。

 コーナーも連続し、バイクのために有るような道だなと勝手に都合の良いことを思う。

 午後5時過ぎに宇和島市内に入るころは、快晴になっていた。駅前のステーションホテルにチェックイン。

 学生相撲の大会のため、日大相撲部が宿泊しているそうだ。

 夜中に酔っ払って大騒ぎかなと思ったが、試合を控えているせいか静かなものだった。

 雨中の走行でブラック塗装の愛車の汚れがひどいので、夕食の前に軽く洗車した。

 明日の予報は快晴である。

 本日の走行 378Km

 

伊予の国『菩薩の道場』へ・・・・・

 

平成9年4月29日(火)

 予報通りの快晴。

 伊予の国(愛媛県)は、「菩提の道場」と言われ巡礼の行程で少しずつ自我の中に仏の心が芽生え、次第に浄化されていく

 実践の場であるという。

 早朝6時にホテルを出て41番札所龍光寺に向かう。

 エンジンを止め、ヘルメットを脱ぐと閑静な境内のほうからウグイスの声が聞こえる。

 山門近くには「つつじ」が見事に咲いている。「花遍路」という言葉があるように、2月の梅、3月の菜の花、4月の桜、5月のつつじ等

 この時期に八十八ヶ所巡りをするのが一番いい時期だといわれている。

 納経の受付開始まで時間があるので付近の写真を撮る。

  41番龍光寺

  44番札所大宝寺では、70歳くらいのおじいさんが、御本人と同じくらいにくたびれた「ママチャリ」の後ろにビールケースをくくりつけ、

 それにテントやシュラフ等キャンプ用品をこぼれんばかりに載せていた。

  ビジネスホテルを使うため、着替えくらいしか積んでいない私の荷物を見て「大きなバイクなのに荷物が少ないね」と声をかけてきた。

 山口県からのお参りで、気ままにテントを張り、自転車で廻っていると楽しそうに話すおじいさんの、真っ黒に日焼けしたヒゲ面の

 なかの瞳は輝いていた。

 私が70歳になってもこのおじいさんのような「輝いた瞳」でいられるだろうか。

 有名な道後温泉の近くには、51番札所石手寺があるが、ここには国宝の仁王門をはじめ重文などの文化財も多く一般客の参拝が絶えない。 

  51番札所石手寺境内

 この後順調に今治市内も御参りを済ませ、本日は合計21ケ寺を廻ることが出来た。

 今日の宿は出張で何度も泊ったことがある伊予西条国際ホテル。

 夕方6時過ぎに、事前に連絡をしていた友人のIさんとYさんがホテルまで迎えに来てくれ、一緒に食事をすることになった。

 このIさん、若いが地元企業の二代目社長。クルマとバイクが大好きで、大型二輪にステップアップしたいらしい。

 しかし立場が立場だけに周囲の反対も有りバイクに乗ることは難しそう。

 自由気ままに私のような旅をするのがうらやましいと。

 Yさんも若い頃はバイクで相当無茶をしたらしい。 

 瀬戸内のおいしい魚とビールと地酒、面白い店の大将と一緒に夜更けまで、バイク談義に花が咲いた。

 本日の走行 295Km

平成9年4月30日(水)

 5時起床、昨夜の酒がまだ残っているようだ。

 雨も降っている。天気男のはずなのに今回のツーリングはどうにも天気に恵まれない。

 7時半迄出発を遅らせる。雨があがった。よかった。

 60番札所横峰寺は四国の霊峰石鎚山(1982m)の中腹にあり、札所中の難所の一つとも言える。

 つづら折れの細い林道を延々と登っていく。

 駐車場からもしばらく歩かなくてはいけない。

 天気が良ければ参道から四国山地の峰々が重なってみえるらしいが、今日は雲海の状態。

 この寺は数千本の石楠花と八重桜が同じ頃に咲き、境内がピンク色に染まる。

  60番横峰寺参道にて

 63番札所吉祥寺の牡丹、64番札所前神寺参道の桜のトンネルも時期があえばすばらしいらしい。

 ここまで廻ったお昼前、ポツポツとまた雨が降り始める。

 昨日の午後から、各寺で見かけていた名古屋ナンバーのV−MAX氏とまた会った。

 私は持っていないが、お参り用の金剛杖をフロントフォークにうまく取付けているのには感心した。

 新居浜市内を通過する国道11号線の渋滞がひどい。

 66番札所雲辺寺は海抜約1、000m、札所の中では一番の高所にある。

 ここに上がる道は、まさに林道である。急勾配でせまく路面も荒れている上、雨でスリップしやすい。

 こういう場所では、重量車はやはり気を使う。

 途中の駐車場から先は車両乗り入れ禁止。雨の中を歩く。

 雨とガスで境内全体さえも見渡せないほど。

  66番雲辺寺、雨とガスがひどい

 雨はだんだんひどくなり、香川県内に入った67番札所大興寺の駐車場では、マイクロバスでお参りしているお年よりの団体から、

 「こんな雨の中で大丈夫なの?」と声をかけられる。

 「無事に巡礼する」ことが最大の目的なので、これ以上無理をせずここで今回の御参りは終了と決める。

 ここから徳島までもどることにしたが、雨は一向に弱まる気配は無い。

 春の連休に長期間の快晴を望むのはやはり無理があるようだ。

 しかし、雨中の札所巡りも「修行」と考えれば.....

 それでも残りは香川県内の21ケ寺だけになった。夏休みにまた来ることにしよう。

 本日の走行 275Km

平成9年5月1日(木)

 快晴。

 泥だらけになった愛車を洗車。

 リヤのディスクパッドが摩耗し,メタルが出る限界になっていることに気がつく。

 前回6、000Kmで交換したあと、まだ3、000Km位しか走っていない。

 出発前にも確認し充分残っていたので予備は持ってきていない、こんなに急に摩耗するとは。

 とにかく、電話帳で近くのバイク屋を探しパッドの在庫を聞くがあいにくとどこも置いていないという。

 幸いにフロントはまだ余裕があるので、結局帰京してから交換することにする。

 本日の走行  0Km

平成9年5月3日(土)

 11:00徳島出港のフェリーに乗船。

 本日の走行  20Km
 
平成9年5月4日(日)

 早朝5時に東京港に着岸。

 首都高を走り、自宅に到着。

 午後、行付けのバイクショップに行き、摩耗していたリヤブレーキパッドの交換をする。

 メカニックの人に「乗り方を変えましたか」と聞かれるが、思い当たらない。

 

 今回のまとめ

 総費用   (フェリー 往復5万円、宿泊+食事+お土産4万円、納経+駐車場他1万円、ガソリン7千5百円)

 走行距離   1、048Km

 燃費     15〜16Km/g


 

三度(みたび)出発の日・・・・・

 

平成9年7月26日(土)

 いよいよ四国八十八ヶ所巡りも今回(3回目)のツーリングで結願しそう。

 しかし、今夕台風9号が四国に上陸する見込という。

 徳島行きオーシャンフェリーに、予定通り出港するかどうかを問合わせると、予約番号を聞かれた後、 定刻に出港するから大丈夫だという。

 東京地方の天気予報ではだんだん風雨が強くなる見込である。

 5月に雨の中をいやというほど走らされた場面が思い出される。

 出港は19:10だが、雨の降らないうちにフェリー乗り場まで行くことにした。

 これが正解だった。首都高を有明で降りフェリー乗り場につくとまもなく横殴りの雨になってきた。

 乗船時刻まで時間があるので、持参した池波正太郎の時代小説を読む。

 台風のせいでキャンセルが多いのか、乗船して見ると客室はガラガラの状態。

 定刻に出港して間もなく、外洋はうねりが大きいので東京湾内でしばらく待機するとの船内放送。

 (なるほど、定刻には出港したが・・・・・)結局6時間ほど遅れることになった。

 深夜になって太平洋に出た後、途中の揺れはやはり大きく、何かにつかまらないと船内では歩けない。

 潮岬を廻り紀伊水道にはいる明日の午後にならないとうねりはおさまらないだろう。

 そんな中、女房が作ってくれた小さなヤカンほどもあるオニギリを平気で食べている私を、不思議そうに青い顔をして見ていた

 乗客が数人いたようだ。

 私は酒と船酔いには強いのだ。

平成9年7月27日(日)

 徳島港に13時着岸予定が19時過ぎになってしまった。

 それでも単調な高速道路を東京から走ってくるよりも楽だ。

 今日は徳島泊まり。

 本日の走行  20Km

平成9年7月28日(月)

 また雨である。

 雲が低い。日本海に抜けた台風が高気圧に行く手を遮られ停滞している影響だとか。

 今日の出発はあきらめよう。

 残りの御参りも数が少ないので、日程にも余裕がある。

 ビール、読書、昼寝で休養とする。

 結局一日中雨だった。

 本日の走行  0Km

 

讃岐の国『涅槃の道場』へ・・・・・

 

平成9年7月29日(火)

 曇り、雨は降っていないが怪しげな天気である。

 迷ったが、7時頃、出発を決断する。

 前回までで、徳島県、高知県、愛媛県の67ケ寺の巡礼を終わらせている。

 巡拝最後の地は讃岐の国「涅槃の道場」である。

  「結願」の寺を目指し、満願成就を達成する頃には、現実の苦悩を解決して、心は迷い事から解脱再生されるという。

 徳島市から池田町を抜け観音寺市にある68番札所神恵院に向かう。

 池田町の手前から小雨になる。

 レインスーツを着込む、このスーツには5月から随分と御世話になっている。

 観音寺市の手前で雨があがる。

 75番札所善通寺は弘法大師誕生の地。

 広い敷地に大きな御本尊や五重塔があり、樹齢1、000年を超す楠の古木などがある。

 ここの駐車場に長崎ナンバーのNSRが駐車していた。

 若いライダーで、私が参拝を済ませ出発するのを軽い会釈で見送ってくれた。

 ところで、この後高知ナンバーの2トンダンプで巡礼している人がいるのを見かけた。

 話をして見ると、八十八ヶ所だけでなく、奥の院20ケ寺も廻る予定で、そうすれば「煩悩の数」とおなじ108になるとのこと。

 奥の院はどこも山の中なので、八十八ヶ所だけを廻るより相当余分な時間がかかるらしい。

 途中で携帯電話に留守録のメッセージがあることに気がつき、聞いて見ると自動車保険屋さんからで、事故の内容の詳細を

 聞きたいとのこと。

 しかし、かけ直すにも肝心の電話番号が留守録に入っていない。

  77番道隆寺

 私の家族は全員がクルマを運転するので、もしかして家族に何かあったのかと思い急いで自宅に電話して見るが何もないという。

 結局は迷惑な間違い電話だった。

 今日は、82番札所根香寺まで巡拝をすまし、高松駅前のビジネスホテルに入る。

  82番根香寺のゆり

 このホテルの受付にいた女性、とても親切で「大切なバイクでしょうから屋内駐車場にどうぞ」と言ってくれる。

 とても感謝しています。高松で宿泊するときはまた利用させてもらいます。

 夜になって前回一緒に飲んだ伊予西条のIさんが、クルマを飛ばしてわざわざ高松まで出てきてくれた。

 忙しいのに本当に申し訳ないと思うが、飲み始めるとまたバイク、クルマ、趣味の話で盛 り上がる。

 私はバイクの他、スキー、写真、アマチュア無線、ギター、ラジコンといろいろやっている。

 酒も嫌いではない・・・・イヤ、好きな方である。

 「遊びの近代5種目プラスα」の代表選手というところか。

 Iさんと飲んでいるときには仕事の話をしたことがない。!

 趣味の話に熱中するのは楽しい。

 だからつい一緒に飲みたくなってしまう。

 冷酒を何本もおかわりしながら、明日はきっと二日酔いだろうと思う。

 本日の走行 240Km

 

無事『結願』・・・・・

 

平成9年7月30日(水)

 5時過ぎに起床。

 快晴である。

 二日酔いである。

 ホテルの屋内駐車場からバイクを出していると、通りかかったおじさんが次から次にいろいろと話しかけてくる。

 最期にはヘルメットの値段まで聞かれたのには参った。

 バイクに乗らない人には、1200ccのエンジンのパワーは危険なものとしか想像出来ないらしいが、慣れれば大型バイクほど

 安定感が有る、と説明しても無理かな。

 朝食は勿論、讃岐うどんである。この地で他に何を食べる?

 今日は83番札所一宮寺からである。境内に猫が多い。私の家でも3匹の猫を飼っているので、元気にしているかなとふと思う。

 84番札所屋島寺へは国道11号線から左折し、屋島ドライブウェイ(有料)を走る。他のクルマはほとんど走っていないので気持ち良く飛ばす。

 壇ノ浦の合戦場跡を右に見ながら、あっという間に頂上の広い駐車場に着く。

 ジムカーナが出来る広さは充分にあるなと余計なことを思う。

 朱色の派手な大門。ここをくぐるとなんだか神社のような境内。いままでのお寺と雰囲気が違う。

 85番札所八栗寺はケーブルカーであがる。九州からの団体がバス2台できており、ケーブルカーの中で世間話をする。

 86番札所志度寺は、日本3大名門といわれる仁王門が有名。

  86番札所志度寺

 87番札所長尾寺では、境内までクルマの乗り入れが出来る。 

 この後はいよいよ結願の寺、第88番札所大窪寺。

 阿讃山脈の胎蔵ケ峰を背に山ふところに抱かれたかたちで、本堂、多宝塔が並んでいる。

 1、400Kmの長い道中の最終の地は、お遍路さん達にどんな気持ちを味わわせてくれるのだろう。

 本堂の横、お大師さんのお陰で無事結願出来た御礼に、と奉納された金剛杖や菅笠に、その想いが伝わってくる。

 本堂を背に記念写真をとるお遍路さんの笑顔がすばらしい。

 私もここでは、三脚を使わずに新潟から来たという「お坊さん」に、カメラのシャッターを押してもらった。

 いい笑顔で写真がとれただろうか。

 今日の結願で私自身の中で、何かが急に変わったわけではないけれども、前にも書いたようにたくさんの「見知らぬ人との出会い」

 が何ものにも代えられぬ想い出である。

 素直に「ありがとう」と言えた今日のお参りの気持ちをいつまでも大切にしたいと思う。

 結願の記念に、お土産を数種類選び購入した。

 昨日から私のバイクと前後しながら巡礼をしていた岐阜ナンバーのワゴン車の父子2人、すこし早い昼食でも一緒になった。

 お互いの無事結願を称え、帰途の無事故を祈ってお別れした。

  結願の寺、88番大窪寺

 この後、最初にお参りした鳴門市の1番札所霊山寺へ「お礼参り」。

 奇しくも、昨夏のスタートと同じ快晴、猛暑の7月30日であった。

 全てが終わってみれば、急ぎすぎた巡礼だったかもしれない。

 もっとゆっくり、あじわいながら、廻るべきだったかも知れない。

 いつかまた来たいと思う。

 若い皆さんはお寺にお参りすることは少ないかもしれないし、ここであまり知られていないお参りの心得をひとつ。

 @山門・仁王門に一礼し、境内に入る

 A口をすすぎ、手を洗う

 B鐘楼で鐘をつく(参拝後は縁起が悪い) 一人一打

 C本殿にて納め札入に納札と写経を納める

 Dローソク(お灯明)・線香・お賽銭をあげる ローソク(お灯明)は奥から立てる 線香は中心から立てる

 E合掌し、読経(御詠歌・回向文など)する

 F大師堂に本殿同様に参拝する

 G納経帳に朱印をもらう

 H山門にて一礼
 

 ここから戻るにはそんなに距離は無い、しかも猛暑だが走っている途中で眠くなり、途中二度ほど停車し自動販売機のウーロン茶を飲む。

 本日の走行 163Km


 

7月31日

 快晴

 昨夏気持ち良く走った「南阿波サンライン」のワインディングを思い出し、朝食のあと日和佐に向け55号線へ入る。

 この南阿波サンラインは、交通量が少なく本当に走るのが楽しい。

 片道13Kmほどだが、つい2往復してしまった。

  南阿波サンライン

 牟岐には、世界中から集めた貝の博物館「ラモスコ牟岐」というのがある。

 中に入ると、家族連れが1組だけ。

 ゆっくりと鑑賞出来た。

 海岸もすぐ近くで、水もきれいだ。
  
 本日の走行 166Km

 

旅の終わり・・・・・

 

8月2日

 快晴

 今日のフェリーで東京に帰る予定。

 今回は走行距離も少なかったが、何よりも「無事に結願」を達成出来たことがうれしい。

 四国の自然と風土、そこに住む人達が醸し出す雰囲気、揺れ香る草花、これら全てが遍路道を行く人達をそっと見守っていてくれる。

 好奇心だけで巡礼をはじめた人も、自然に旅の中で自分自身を見つめて見ようと、本式のお遍路さんになっていく。

 札所を廻っても、お寺さんなど宗教者から教えを受ける機会はほとんどないが、それでもいい。

 四国に来る様々な人に出会って、お遍路さん同士語り合って、自分の知らなかった土地の習慣に触れるうちに、

 それまで持っていた常識や、とらわれた心が崩れ去っていく。

 一人一人はそれぞれの悩みや苦しみを抱えているにしても、お遍路さんは恵まれた人達でもある。

 信仰心ばかりでなく、時間やお金、体力、気力、そして家庭や仕事の環境に恵まれていなければ、総延長1400Kmにもなる

 この遍路旅をやり通すことはできない。

 自分自身の恵まれた環境に素直な心で感謝し、まもなくこの旅が終わろうとしている。
  

 今回のまとめ

 車種      ヤマハXJR1200R 96年型

 総費用    (フェリ−往復5万円、宿泊+食事+お土産3万円、納経+駐車場9千円、ガソリン5千円)

 走行距離    672Km

 燃費      15〜16Km/g


追記

この後、日を改めて和歌山県の高野山へ行き「金剛峯寺」「奥の院」へもお参りをすませました。(1997/10/30)

今度はいつか、88番札所から逆に廻って巡礼をしてみたい、そうすればきっと景色が違って見えることでしょう。

 

ここまで、全部読んでくれてありがとうございます。

お疲れ様でした。                   

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