クリーニング豆知識
第九十八回:「のりなし」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第九十八回は、実は可能な「のりなし」について


のりなし


といきなり言われても、
何の事か分からない方が大半であるとは思いますが

実は当社のワイシャツやブラウス、
ゆかたなどは
「のりなし」が可能です

と言うのも、のり付けの工程は、
洗いの途中で必ず入るものではないからです

通常は、
「洗い」
⇒「のり付けするもの、のり付けしないものに分類」
⇒「のり付け」

・・・としているため

「のりなし」の衣類を、洗い上がった後に

「のり付けしないもの」
と同じものに分類するだけだからです

「のり付け」の工程を行わない場合、
当然ですが、
「のりなし」になります


当社ののりは、
今では珍しい
「炊き糊」と言われるタイプで、
食用にもなる
コーンスターチ(でんぷん)を、
毎回煮てから添加しています

煮たのりはすぐに悪くなるため、
基本的にその日のうちに使い切る必要があります

ワイシャツを洗う枚数の多い大工場では、
その部分がかなりの手間になるため、
今ではほとんどのクリーニング店が、長期保存が可能で、
容器に入った
「合成糊」と呼ばれるものを添加しています


では、合成糊と比較して、
炊き糊の方が優れているのか?と言うとそうでもなく、好みの問題です

炊き糊は綿のワイシャツに効きやすく、
合成糊はポリエステルに効きやすい、と言う特徴があります


そして、炊き糊を効きやすい綿のワイシャツに添加した場合、
合成糊では出す事が出来ない、
「独特の固さ」になります

逆に、ポリエステル素材のワイシャツには効きにくいため、
合成糊の方が固くなる事も多々あります


しかし、お客様によっては

「おたくのワイシャツは、
のりが強すぎて、首の所がかぶれる」
と言われる事もありました
そのようなお客様のために用意したのが、

のりなしワイシャツ」
です


ただ、のりは
表面を薄くコーティングしているようなもので、
その部分に汚れが付着し、
洗いにより
のりごと落とす事が出来るため

「のりなしワイシャツは、汚れが蓄積しやすい」

というデメリットもあります

洗う間隔にもよりますが、のりなしワイシャツは、
だんだんと色がくすんでグレーになる傾向にあります


ちなみに、のりの強さはその人の好みによる部分が大きく、
「もっとのりを強くしてくれ」と言われる事もあります
では、
「のり強く」があるか・・・・・・と言うと、
少なくとも当社にはありません

のりは、どれだけ添加しても効くと言う訳ではなく、
「これ以上は吸収出来ません」と言う上限があります

その上限を超えてのりを添加すると、
吸収しきれなかったのりがワイシャツの表面に残り
(当社では、のりが「はう」と言います)、
プレスすると、その部分ののりが焦げる事もあります


全てのクリーニング店が

「のりなし」
メニューを用意している訳ではありませんが、

「のりが強すぎて痛い」と常々感じている場合、
クリーニング店側に

「のりを付けない、と言う事は可能ですか?」

と確認してみると良いでしょう

ちなみに、
「のり薄く」は今まで見た限り、
メニューとして用意しているクリーニング店はほとんどないようです