クリーニング豆知識

第九十七回:「石油価格とクリーニング」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第九十七回は、一時期大幅に下落した
「原油価格」とクリーニングの関係について



原油価格が、一時期『1バレル=30ドル』以下まで下落しました

日本は石油の輸出国ではないため

多くの人が
「ガソリンが安くなりそう」
程度の反応で済んではいますが、石油産出国や、
アメリカのシェールガス関連の会社にとっては大打撃です


実はクリーニング業界は、2012〜2014年頃、
「値上げの波」と呼べるものがありました

多くの店舗が、石油価格の上昇を理由に値上げを実施。
消費税が5%⇒8%へ移行する時期であった事もあり、
ダブルの値上げと受け取られないよう、
増税のだいぶ前に値上げを済ませる業者も見られました


あまり知られていない事ですが、

クリーニング業界は原油価格の影響を強く受けます


ドライクリーニングの洗剤、お預かりした衣類を
お返しする際のポリ袋、ハンガーなど

クリーニング業において
欠かせない消耗品の多くが、
石油由来です
そのため、
石油価格の上昇=消耗品の価格上昇=経営の圧迫
・・・と繋がる訳です

また、ガソリンを大量に消費する運送業や、
船のエンジンに使用する漁師、
石油を原料とした加工品に頼る業種の多くが、
原油価格の上昇に苦しんでいました


さて、ここからが本題です

では、原油価格が上昇に伴い値上げをした業種・業態は、
原油価格が下落すると、すぐにでも値下げをしたのか?
と言うとそうでもありません


「買う側」からすると詐欺のようにも思えますが、
「売る側」からすると、そう安易に値下げは出来ません。と言うのも、

@原油価格が、いつまた急上昇するとも限らない
A頻繁な値上げ・値下げは消費者の信頼を損なう
Bそもそも特別なセールでもない限り、
値引き・割引はしたくない

・・・と言った理由から、
「よし、値下げしよう!」とすぐには決められないのです


ただ、航空会社の燃料サーチャージのような、

「燃料価格と連動して価格が上下する」
と言う仕組みは、今が狙い目です

今回の原油価格の下落は、
アメリカのシェールガスを採算割れ(と、それに伴う倒産)に追い込むため

石油産出国が減産(=価格上昇への誘導)をせず、
体力勝負を仕掛けている所が大きく、
今後ずっとこの状況が続くのかどうかは不透明です

そのため、
「今だから出来る、お得な買い物」
をしておくのが、賢いやり方だと思います