クリーニング豆知識

第九十回:「初回半額、に潜むモノ」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第九十回は、「通販会社のテクニック」について


通信販売の会社のCMや新聞の折り込み広告で、
よく
「初回半額!」というキャンペーンを行っています

実際には、
「キャンペーン期間中、初回半額」ではなく、
「初回は常に半額」である場合もありますが、
CMや広告で「今だけ」と言わなければ
嘘ではありません

「半額にして儲かるのか?」
とは、
CMや広告を目にした、多くの人が持つ疑問でしょう


しかし、売る側からすれば
「結果として儲かるから、初回半額にしている」のであって、
「利益が上がらないのであれば、初回半額にはしない」
・・・と言えます

では、その仕組みとはどのようなものなのか


まず、通販会社が喉から手が出るほど欲しいモノ
それは、「見込み客の住所と氏名」です


住所さえ把握してしまえば、
繰り返し商品紹介の手紙を送り、購入を促す事が出来ます

しかし、そもそも住所や氏名が分からないと、
そのようなアプローチを取る事が出来ません

そのため、多少のコストをかけてでも、
見込み客の住所と氏名を獲得したいと考えます


そこで
「初回半額」、と言うやり方を用いる事になります
半額につられて一度購入すると、定期的に商品カタログが届き、

一部の人は
「定期便お届けコース」を申込み、
ある人は不定期で商品を購入する

初回のみでその後は全く購入しない、と言う層も一定数ありますが、
初回半額で獲得した顧客情報から、
それらの損失を上回る利益を出す事が出来れば、
万事OKと言う訳です


そして、初回購入以降、しばらく購入のない消費者については、
一定の回数カタログを送った時点で送付をやめ、
また
「初回半額」で獲得した顧客へカタログを送付する
・・・というようなシステムに(多くの場合は)なっています


このような、通販会社のシステムは本当に良く出来ていて、
カタログを送るタイミング、送付をやめるタイミング、
大きな冊子カタログと、小さな手紙サイズの使い分けなど

「自動的に回る仕組み」として優れていると感じます


しかしながら、それ故に人間的な温かみというものに欠け、
そのようなやり方に対するカウンターとして

経営者の人柄が滲み出る手紙を、全顧客に送付するなど、
非常にアナログ的な手法で成功を収めている例もあります


「売る側」として、このようなお客様への
アプローチを実践していて感じるのは、
「中途半端が一番良くない」と言う事です

システムに徹して、
多くの人に届けるか、

アナログに徹して、
ごく少数の人の心に刺されば良しとするか


「多くの人に見てもらいたいけれど、
ごく一部のコアな層にも届けたい」
などと欲張ると、

誰の心にも響かない販促になりがちであると言う事を、
数々の失敗を経た今、感じています