第八十五回:「雨とダウン」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第八十五回は、「雨によるシミ」について
お陰様で、今年もたくさんのダウンをお受けしています・・・・が
「雨に濡れただけで、シミになるダウンがある」と言う事は、
一向に浸透する気配がない、とも感じています
雨の日に、濡れているダウンを着ている人を見ると、
「ちょっと危ないな」といつも思います
当然ですが、ダウンを販売する側は、
「このダウンは、雨に濡れるとシミになるので、注意して下さいね」
・・・・などと親切に教えてくれる訳ではありません
雨に濡れた事によるシミは、「輪ジミ」と呼ばれる、
輪っか状にシミが浮き出て来るケースがほとんどです
これは、羽毛に含まれる汚れや、
あるいは表面の汚れが水に溶けた事によるもので、
水洗いしてしまえば大抵は落ちるか、大分薄くなります
「なら水洗いすればいいじゃない?」と考えるのは当然ですが、
水洗い出来るダウンばかりではありません
水洗い可能なダウンと、
ドライクリーニングのみ(=水洗い出来ない)ダウンの割合は、
当社がお受けするダウンでは半々と言った所です
つまり、当社でお受けするダウンの半分は、
「雨に濡れるとシミになり、除去が難しいダウン」
・・・と言う事になります
また、一部の高級ダウンは、販売する会社が推奨する、
指定のクリーニング店でクリーニングするようにと説明があり、
指定のクリーニング店以外で、何らかの事故が起きた場合、
賠償には応じない・・・という場合もあります
すっかり大衆衣類として定着した感のあるダウンですが、
クリーニング店側からすると
「雨に濡れただけでシミになるのに、多くの人がその事を知らない
しかも必ず一番外側に着る」という、取扱いの難しい衣類の一つです
ダウンを購入する際、
なるべく水洗い可能なものを選ぶ事をお勧めします
また、自分が持っているダウンのうち、どれが水洗い可能で、
どれが水洗い出来ないのかを覚えておき
水洗い出来ないダウンは、
雨に濡れないよう気を付けると良いかと思います