クリーニング豆知識

第八十回:「イノベーションのジレンマ」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第八十回は、「お客様の声」について



「お客様のご要望にお応えしました」


CMや新聞・雑誌・数あるホームページ上で、
このような言葉をたくさん見かけます

しかし、
「お客様の声に真摯に耳を傾け、
開発したサービスや商品」

全く売れていない、という事は多々あります
何故、そのような事が起こるのでしょうか


「買う側」からすると、ああして欲しい、
こうして欲しいと思っていた自分の要望・願望が、
正にそのまま取り入れられた商品が登場したとして、
絶対に買うのか?と言うとそうでもありません

その商品が、発売した時の状況次第です


代替となる商品を既に所有していたり、
あるいは商品自体に興味を失っている場合もあります

そしてここに、
「お客様のご要望にお応えする」
という「売る側」の落とし穴があります


ビジネスの名著と言われる
「イノベーションのジレンマ」が、
主にディスク・ドライブ業界の変遷から指摘しているのがこの点で

「顧客の要望に真摯に耳を傾けた結果、
転落した企業の例」
が紹介されています

自分達のメインとなる顧客の要望を取り入れ、
積極的に技術革新(イノベーション)を行い、
製品の性能を劇的に向上させた結果・・・・・
時代から取り残されてしまったのです

気付いた時には、代替品に取って代わられていました
そして、自分達の作った製品に対して、

「もういらないよ」
と言われてしまったのです


現在の状況に当てはめるなら、タブレットPC市場は、
大型化するスマートフォンとパソコンの間で

「中途半端な存在」
となり、
急成長していた出荷台数に陰りが見えてきました

今から、
「全てのタブレットに対する不満を解消するタブレット」
を作り始めたとして、もしかして発売する頃には、
タブレットPCそのものに対する関心が、今よりもっと低い

平たく言えば
「もうそんなものいらないよ」
と言われてしまう可能性があります
多くの消費者の要望を取り入れ、開発した商品であっても


「売る側」として見た場合、
日本という国は
「お客様至上主義」が少し行き過ぎていると感じます
便利な事は良い事ですが、消費者の要望を取り入れ続けた結果、
「色々出来るけれど、やり方が良く分からないサービス」が多すぎます


当社のような小さな規模の会社の場合、
「どのようなサービスを提供出来るか」と言うよりも、
「何を切り捨て、何処に特化するか」、が大事である、
といつも考えています

多種多様なサービスを提供する役割は、
業界大手に任せておけば良いのです