第七十七回:「クリーニング業は成長産業か?」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第七十七回は、「クリーニング業は儲かるのか?」について
当社の所在する新丸子駅周辺は、
「歯科医・美容室・クリーニング店」の激戦区です
『美容室がなくなったと思ったら、
同じ場所に美容室が出来た』、
『クリーニング店が撤退したと思ったら、
同じ場所にクリーニング店が出来た』、
という事(あるいは、クリーニング店⇒美容室)が
ここ数年で何度かありました
当然の疑問として、
「クリーニングって、そんなに儲かるの?」
・・・と思われた方も多い事でしょう
クリーニング業に携わる人間からすると、
「そんな事はない」と断言出来ます
現在は、バブルの頃と比較して
半分以下にまで落ち込んだ市場を
回復する見込みも少なく、
ただ「少ないパイ」を奪い合っている状況です
原因としては、ユニクロをはじめとする
「家で洗える」カジュアル衣料の台頭
家庭用洗剤および洗濯機の高性能化といった要因により、
「そもそもクリーニング業を必要としていない層」
が増えた、と業界紙等で言われています
ただ、ここまで需要が落ち込んで感じるのは、
クリーニング業界側が、バブル絶頂期の頃の売上を忘れられず、
「待っていれば、いつか売り上げは戻る」と思い込み
消費者に「クリーニングに出す必要性」
を訴える努力を怠って来た事が原因、という事です
よく、新聞等で「アベノミクスの影響はまだ限定的」
と言われていますが、何の努力もせず、
クリーニング業全体がその恩恵を受けられる事はなく
「積極的に需要を取り込むべく、努力した店」
だけが売り上げを上げる事が出来る、と考えています
ただ、バブル絶頂期の頃の売り上げに戻す事は出来なくとも、
「自分なりの特色を打ち出し、生き残る」
事は十分可能である、と常々考えています
具体的には、
@大手の安売りチェーン店と、価格で勝負しない
A自店のターゲットとする客層を絞り込み、
徹底的にそこへ向けてアピールする
といった戦略になります
大手チェーン店が出店する際、
大抵は「ドライ品全品30%OFF」のようなセールを行います
新規開店時に会員を一気に集め、他店のシェアを奪い、
獲得した会員に対して継続的に販促を行いたいからです
しかし、そこで焦って「ならウチは50%OFFだ!」とはやらない
また、チラシを作成する時にも、
「このチラシを受け取った、
全ての人に関心を持ってもらおう」とは考えていません
1000枚配布して、10人の心に深く刺さればいい
「自分が探していたのは、こんなクリーニング店だ!」と、
ごく少数でも思ってもらえれば、
そのチラシには十分過ぎる程の意味があります
ちなみに、業界内部の人以外にはあまり知られていない事ですが、
クリーニング業と美容(理容)業は共通点が多いと言われています
具体的には、
@初回利用時に、お客様の「氏名・連絡先・住所」を入手出来る
A一度行って終わりではなく、定期的な来店が見込める
と言った点で、非常に似通っている業種であると言えます
そしてこの2点は、「一度行って終わり」の
代表格である飲食店(特に個人経営)からすると、
『非常に羨ましく見える』そうです
何故なら、連絡先が分かっているので、電話をかける事が出来、
住所が分かっているので、ダイレクトメールを送る事が出来るからです
そのような、「クリーニング業としての長所」を
生かしたやり方を打ち出す事が出来ない場合
アベノミクスの影響で日本の景気が底上げされても、
クリーニングの需要そのものは減少し続け、
店舗もどんどん淘汰されていくでしょう