第七十三回:駆け込み需要
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第七十三回は、売る側から見た「増税前の駆け込み需要」について
消費税増税が実施され、
税率が8%になりました
増税に向けて、他業種はどういった取り組みを行うのかと、
今年初めから流通新聞の記事や、
何よりも新聞の折り込みチラシを見てきました
「増税前はまとめ買いがお得!」とか、
「増税前のラストチャンス!」などと言った
今を逃すと大きく損をするような気持ちを煽り、
消費に結び付けようとしているチラシが、非常に多く見受けられました
5%と8%で数円の差しかないような商品も全て、
とにかく「まとめ買いしないと損ですよ!」と、
毎日が煽りの連続です
また、一部スーパーでは金額を
「税込表示」から「税抜き表示」へと移行し、
早めの段階で対応しているような例もありました
が、しかし
「売る側」として見ると、
この消費税増税という「一大イベント」は
「消費者の不安を煽って、稼ぐ事が出来るチャンス」
として捉える人もいるのではないかと、
多くのチラシを見ていて感じました
例えばですが、増税後も増税分の3%を企業側で吸収し、
値上げはしない、という判断をした企業があったとします
しかし、そのような企業でも、
「増税前の今がチャンス!」と謳ってセールを行う事は可能です
増税後も価格は変わらないのにもかかわらず
そのような事をしている企業ばかりである、
という事を言いたいのではなく、
そういったセールを仕掛ける事が可能、という事です
また、「税込表示から、税抜き表示へと変更しました」
・・・という場合でも、
こっそり商品の価格を変える、という事が可能です
どういう事かと言うと、
「税込100円」であった商品を、
「税抜き100円」で販売する、という事です
これが何を意味するのか
「増税前に税込100円」の場合、
本体価格は95〜96円となりますが
「増税後に税抜き100円」の場合、
本体価格は100円です(税込みで108円)
つまり、増税分の3%に加えて+αの値上げをしています
本体価格95〜96円の場合、消費税8%として計算すると、
95×1.08=102.6⇒102〜103円
96×1.08=103.6⇒103〜104円
・・・と、実は値上げをしている事が分かります
繰り返しますが、このような事をしている企業ばかり、
という訳ではありません
「売る側」は、こういった仕掛けが出来るのです
また、今まで原料の高騰や消費税を、
価格へ転嫁しないよう頑張って来たが、
もう限界・・・と言う事も考えられます
その際、「このような事が理由で、現在の価格を維持出来ません。
そのため、この部分に関しては値上げを
させていただきます」と説明するのか
あるいは、こっそり値上げして、
「税抜き表示へと変更しました」という告知だけで済ませるのか
「何を、どのくらい値上げするのか。
そして、どのように消費者にそれを告知するのか」によって、
企業の、消費者に対する姿勢が
とても良く分かるとつくづく思います
結局の所、「今買わないと、損をしますよ!」
という不安を煽るようなやり方を真に受けず、
「必要なものを、必要な分だけ」買う、
という消費の仕方がベストだと思います
消費税増税後の需要減に対応するため、多くの企業は、
増税前とほぼ同じ価格を維持していく必要があるでしょう
そして何より、
2015年にも同じ事が起こります
「売る側」の仕掛けを見破り、賢くお金を使って下さい