クリーニング豆知識

第七十二回:「神は細部に宿る」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第七十二回は、「洗濯のコツ」について


毎日たくさんのクリーニング品をお受けしていると、

「洗濯のコツ」
について、聞かれる事があります

具体的には、
「家で洗って失敗した」とか、
「気が付いたらシミになっていた」
という品物をお受けした際に

対処法・防止法を説明した上で、

「コツ」について聞かれる事が多々あります

しかし
残念ながら、

「これさえ覚えておけば大丈夫な、洗濯のコツ」
・・・というものはありません


強いて挙げるなら

「品質表示に書いてある通りに洗う事」ですが

ドライクリーニングのみの衣類は
そもそも家で洗う事が出来ないため

「品質表示をよく確認した上で、表示通りに洗う」という対応を、
家庭で完璧に行う事は不可能です

「ドライマークの衣類も洗える洗剤」
というものが最近では出回っていますが

それはあくまでも

「ドライマークも洗える洗剤を使用した、水洗い」であって、
ドライクリーニングと全く同じ洗浄効果が得られる訳ではありません

また、シルクなど、水に漬ける事自体が厳禁の素材もあるため、
「ドライマークの衣類全てが、確実に、安全に家庭で洗える」
という事が保障されている訳でもありません


業務用のクリーニングは、
根本的に家庭のクリーニングとは異なるものです

例えば、クリーニング店の主力商品であるワイシャツ
洗い〜仕上げの工程において、当社では以下の点にこだわっています

@前処理(シミヌキ剤を使用したシミヌキ)

A洗いに使用する洗剤
(より白くなるための、蛍光増白剤入の業務用洗剤+漂白剤)

B洗いに使用する水の温度
(40℃。基本的に温度が上がる程、洗剤の洗浄効果は上昇します))

C洗いの時間

D添加するノリの種類と固さ
(コーンスターチ・当社の場合はやや硬め)

E仕上げ機械の温風を当てる風量と時間

Fたたみ方・ハンガーアップの仕方
(たたみ機・立体包装機を使用しています)


これら全ての要素を含むおかげで、
当社のワイシャツの品質は成立しています
逆に、これらのうちの一つでも欠けると、
確実に品質は下がります

昔の格言にあるように、
正に
「神は細部に宿る」のであり、
「これさえやれば大丈夫!」
・・・と言えるような簡単なものではありません


ただ、
「家で洗えるものを、失敗せず洗いたい」という場合、

@水洗い可能な表示の衣類でも、
繰り返し水洗いすると、若干の色落ち・縮みが発生する場合がある

A特に夏に着用する衣類は、
買う前に品質表示をよく見て、水洗い可能な衣類を購入する

B汗をかいたらすぐ洗う
汗に含まれる塩分が白く浮き出てきた場合、要注意

という3点を、アドバイスするようにしています