クリーニング豆知識

第六十八回:ブレザーの汗取り

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第六十八回は、ズボンではなく、ブレザーの「汗取り」について


今年(2013年)の夏は猛暑だった事もあり、
ズボンの汗取りが非常に多く集まりました

ただし、これは
「暑かったから汗取りが集まった」という単純な事ではなく

このホームページや店頭における、
汗取りに関する情報発信の効果が出た、と考えています


汗取り加工そのものは、
「他所では行っていない当社独自の技術」
・・・という訳ではありません

(WクリーニングやW加工など、
クリーニング店によって、名称や加工料金は異なります)

ただ、
「汗取り加工が出来ますよ」という情報を、
積極的に発信しているかどうか、
についてはクリーニング店によってかなり差があります


当社は積極的に情報を発信していた事もあり、
ご利用になるお客様の中で、
ズボンの汗に対して悩んでいた方の多くに

「ズボンの汗取り加工が出来る」
という事は認知されていました

しかし、例えば「ズボンの汗取りが出来ます」という情報を、
ほとんど発信していないようなクリーニング店の場合、
消費者側は
「ズボンの汗取りが出来るかどうか」
がそもそも分からない訳です

当社は、ズボンの汗取りがメニューとして、確かに存在している
情報を発信していないクリーニング店では、
出来るのかもしれないけれど、それが良く分からない

その場合、
「出来る事がハッキリしている所に頼む」
という行動に繋がります


しかし、困った事が一つ
ズボンと同時に、
ブレザーの汗取りをお願いされる事があります


ズボンの場合、汗取り加工で多少のシワが寄っても、
プレス機で伸ばす事が出来ます
しかし、ブレザーの場合には「プレス機で伸ばす」
という事が出来ないため、基本的に汗取り加工は行っておりません

正確には、汗取り加工ではなく、水洗い可能なブレザーであれば問題がなく、
大部分を占める
「ドライクリーニングのみ・水洗い不可」
のブレザーは、収縮のリスクがあります


汗が蓄積した状態で時間が経過し、
エリ・ワキの部分が脱色しているブレザーを、
今年もたくさんお受けしました

脱色は、汗の成分で

『色を構成する要素の一部が壊れている状態』であり、
シミヌキして元に戻る事はありません
(黒が脱色して赤茶色っぽく変わるのは、そのような反応によるものです)


暑い間は、「汗をかかない」という事自体が難しいため、
夏の間だけでも、
ワキ部分の内側には汗を吸収するパッドを貼るなど、
対策を取った方が良いでしょう

また、ズボンと同様
「水洗い可能なブレザーを買う」という事も対策になります
ただし、現状ではほとんどありません

男性用では、「シャワーで洗えるスーツ」のようなものがほとんどで、
女性用となると本当にごくごく一部です


お気に入りの衣類と長く付き合いたいと考えた場合、
買う時点で
「いつ着るものか、どのような洗い方に対応しているのか」を、
よく確認してから購入する事を、強くお勧めします