クリーニング豆知識

第六十六回:プレミアム戦略

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第六十六回は、ここ数年の「売り方のトレンド」について


ここ数年の新商品や新サービスの傾向を見ていると、
トレンドの一つが
「プレミアム戦略」であると感じます


火付け役は
「プレミアムモルツ」ではないかと思われますが、
「日頃節約している分、たまには
(あるいは自分の好きなものには)贅沢したい」

というニーズを非常に上手く取り込んでいる、とつくづく思います


そして、プレミアムモルツに続けとばかりに、
世の中には
「プレミアム○○」という名称のものが溢れています

例えば、
「プレミアムアウトレット」
どの辺りがプレミアムなのか、CMでは全く伝わって来ませんが

「ワンランク上のアウトレットモール」
というイメージ戦略としては有効だと思います


元々、日本人は
「松・竹・梅」の三段階を好む傾向にあり、
それらの三段階の価格を用意すると

大抵の場合は「竹」が一番売れる
、という事は、
「売る側」には広く知られてはいますが、
「買う側」にはあまり浸透していません
(ちなみに英語では、ベスト・ベター・グッドと言うそうです)

そして、そのような視点で商品やサービスの価格を眺めると、
また違った事が色々と見えてきます


例えば、
「ほぼ需要はない」と分かった上で
「梅」
の価格を設定し、
実際には
「竹」に誘導しようとする売り方

あるいは、
「梅」がなく、標準的な価格の「竹」と、
高付加価値・高単価の
「松コースのみで成り立っており

とりあえずは新規客を
「竹」コースでの獲得を目指し、
徐々に
「松」コースの付加価値を説明して、誘導するやり方など

中には、
「松」は確かに高い付加価値があるものの、
「竹」「梅の間にほぼ違いはなく、
それでいてやたらと
「竹」に誘導するようなやり方もあります


大切な事は、様々な商品やサービスの、
松・竹・梅のどのコースを選ぶにしろ

流されるままに決めてしまうのではなく、情報をしっかりと集め、
「本当にお金を出す価値があるものなのか?」
を自分でしっかりと考え

「お金を出す価値がある」と判断した場合は、
その判断に従えば良い、という事です


特に、
『企業として受注したい一部のコース』に誘導するため、
他のコースの情報や、存在そのものを
あまり教えないような場合には、警戒しましょう


ちなみに、割と良く知られた実験ですが、1.000円のワインを、
「これは1.000円のワインである」と教えて飲んでもらった場合と、
「これは5万円のワインである」と教えて飲んでもらった場合、
後者の方が
『美味しく感じる』と答える人の割合が多いそうです

食品や飲料に関しては、
細かい味の違いは一般の方にはそこまで分からず、
全てではないにしろ、一部のプレミアム消費は

つまる所
「私はちょっと贅沢をしている」
という満足感を売っている、とも言えます