クリーニング豆知識

第六十三回:白いダウンを着るリスク

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第六十三回は、すっかり一般的な衣類となった、ダウンジャケットについて


今年(2013年)も昨年と同様、3〜4月にダウンジャケットのセールを行い、
お陰様で昨年以上の売り上げを記録しました

ほんの少し前までは、ダウンジャケットと言えば
一着数万円が当たり前であった所を

ユニクロが低価格のダウンを発売し、
大手スーパーやアパレルメーカーもそれに追従し、
すっかり
「誰もが着ている、一般的な衣類」になりました


ただ、毎年受付をしていて気になるのが、
白いダウンのエリやソデに付いた皮脂汚れ

他の色のダウンと比較しても、非常に目立ちます

また、購入から数年が経過しているようなものは、
全体の色がくすんで、ややグレーっぽくなっているものも多く見受けられます

白いダウンを着るという事は、
そのようなリスクも背負うという事です



黒や紺、茶といった濃い色のダウンの場合、
エリやソデの皮脂汚れは

「黒っぽく浮き出る」
という事からあまり目立ちません

逆に目立つのが、ファンデーション
エリ全体が白くなっているダウンも多く見受けられます


問題は、ファンデーションは、
シミヌキやドライクリーニング比較的落ちやすい事に対して、
黒く変色した皮脂汚れは、非常に落ちにくいという事です


皮脂汚れは、
『白〜茶色っぽく浮き出る⇒時間の経過とともに、酸化して黒くなる』
・・・という特性があり

酸化して黒くなってしまうと、
シミヌキによる除去が困難な場合があります

ダウンを冬の間ずっと着用していた場合、
春先になってクリーニングに出す頃には、
皮脂汚れが黒く変色していて手遅れ、

といったケースを毎年たくさんお受けします


ファンデーションも皮脂汚れも、
時間が経過すると除去が困難な場合があります
それを防ぐには、
「中間洗い」が必要です

具体的には、着用を始めてから1〜2か月程度で
一度クリーニングする、という事になります

12月に着用を始めて、
翌年3月頃まで使用するという場合は、1月中が目安です

当社でも、年始から中間洗いの必要性を
店内のポスターや受付の際に説明していましたが、
まだまだ周知が不足していました

冬の間は毎日のようにダウンジャケットを着用するという場合、
冬のちょうど中間あたりで一度シミヌキをして
洗っておくと、結果として長持ちします



ちなみに当社の3〜4月のダウンジャケットのセールですが、
これはいわゆる
「早割り」のようなものです

どういう事かと言うと、本格的に暖かくなり、
スーツ上下やコート、オーバーといった、
仕上げに手間のかかる衣類が多く出る頃に

更に冬の間ずっと着用していたため、
シミヌキに手間のかかるダウンが集中すると、
工場で扱う事が可能な衣類の量を、
オーバーしてしまう可能性があるからです


そのため、ダウンジャケットを、
スーツやコートはまだそれ程出ていない、
3〜4月の段階で目一杯集めておき

5月以降はスーツやコートにある程度集中したい、
という当社側の事情があります


多くの業界で
「早割り」がありますが、
「なぜ、早いと安いのか?」と考えてみると、
その業界の抱える問題点や、その会社の思惑が透けて見え、
非常に面白いといつも思います