クリーニング豆知識

第六十二回:ドライでスーツは縮まない

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第六十二回は、ドライクリーニングと『縮み』の関係について


衣替えの時期や、社会人になりたて、というお客様から、
よく
「どのくらいの頻度で、スーツは洗えば良いのか?
という質問をお受けします

そのような時、基本的には

「シミが付いたらすぐにでも。
また、シミを全く付けていない場合でも、

1シーズンずっと着用していたなら、
洗っておいた方が良いですよ」
とお答えしています

シミの多くは、時間が経過すると落ちにくくなります
そのため、
「シミが付いたら、すぐにでも洗った方が良い」は、
衣類を長持ちさせるうえでの鉄則です


また、シミを付けていない場合でも、1シーズン着用した場合、
エリや袖口に皮脂汚れが蓄積しているため、
1シーズンに一度はクリーニングをすると、
結果としてスーツは長持ちします

皮脂汚れは、時間が経過すると
変色して出てくるケースも多々あるため

「見た感じでは汚れていないから」と収納して、
次のシーズンになってクローゼットから出してみたら変色していた、
というご相談を毎年のようにお受けします


ただ、そのような説明をすると同時によく聞かれるのが、
「頻繁に洗うと、すぐに縮むのではないか?」という事です

スーツのクリーニングはドライクリーニングによる洗いが一般的ですが、
ドライクリーニングは衣類に非常に優しい洗い方であり

頻繁にドライクリーニングをしたからといって、
すぐに縮む事はまずありません
縮むのは、大抵の場合が水洗いによるものです



特に、頻繁に水洗いによる処理を行うワイシャツに関して言えば、
20〜30回のクリーニングを行う事により、
数%の収縮が見られる、と言われています

ただし収縮率については製品によってかなりバラツキがあり、
一概に
「何回洗うと、はっきり分かるくらいに縮みます」とは言えません

もし、ドライクリーニングによる処理で収縮が見られた場合、
クリーニング業者側の洗い・管理に問題があるか、
もしくは製品そのものに問題があります



クリーニング業者側としては、スーツを販売する際、
販売店の側からスーツという製品の特性やお手入れについて

ある程度基本的な事はその場で説明するか、
もしくは簡単な説明書のようなものを付けて欲しいとは思うのですが、
そこまでの対応をしている販売店はまだまだ少ないようです


「お客様に安心感を与え、他店との差別化を図る」
という点においても、
アフターケアまできっちりと説明した上で販売する事は、
販売店側にとって大きくプラスになる事は間違いないとは思うのですが、

このような部分はやはり、
「売る側」「洗う側」の考えの違いでしょうか