こちらの「当社の理念」のページで触れていますが、
ウエストが大きめのズボンは、仕上げの機械にセットする事ができません

そのため、そういった大きなサイズのズボンに関しては、
機械で仕上げている腰周りの部分を、全てアイロンによる手作業で行っています

では、その「大きめ」の境目は一体何センチなのか?というと
120センチです

115センチでは機械にセットしづらいものの、何とか固定する事が出来ます
しかし、120センチを超えると何をどうやっても無理です


腰周りの仕上げを手作業で行い、また大体そういったズボンは、
股下の部分にもシワが寄っていて、その部分もアイロンで伸ばす必要があるため、
通常サイズのズボンと比較して、平均して2倍程度の手間がかかります

以前から、「大きなサイズの衣類は、特別料金をいただく必要があるのでは?」
という事は、当社でも度々議論になりました
しかし、「大きな」とは具体的にどのようなサイズを基準とするのか

ズボンであれば、ウエスト○○センチ、という表記があるため分かりやすいのですが、
オーダーメイドのものは、サイズが書いていない場合もあります

では、コートやオーバーといった衣類は、3LやXLといったサイズを基準とするのか、
サイズ表記がない場合、身長で判断するのか、その表記もない場合どうするのかなど、
「どこからが、大きなサイズ?」という判断基準を品質表示だけで決める事が難しい事から、
当社では「長さ」で判断しています

腰あたりまでのコートやオーバーなら、「短めのコート・オーバー」
(当社では「半」という表記を用いています)

セーターでは、腰までなら普通のセーター
それ以上の長さでは「セーター 大」というように、
誰でも分かりやすく、かつお客様に説明しやすいという事を考えた場合、
「長さで区切るしかない」というのが当社としての判断です

そのため、素材が特殊なものでなければ、
ウエストが80センチであっても120センチであっても、ズボンはズボンです


この、「どこからが大きいサイズ?」という判断基準は、
多くのクリーニング店が抱えている課題ではないでしょうか

大手チェーン店などでは人の出入りが比較的激しいため、
受付の店員さんがベテランであっても新人であっても、
「とにかく分かりやすくする」という意味では、ウエストで区切るのは分かりづらく、
ミスの元となります

しかし仕上げの手間を考えた場合、「ウエスト○○センチ以上は追加料金」
とはっきり決めておかないと、
「2倍の手間がかかる衣類を、標準料金で受け付けて良いのか」という、
コスト上の問題が発生します


当社では、
「ウエスト120センチ以上のお客様の割合は非常に少なく、
 またズボンの品質表示に必ずウエスト○○センチと書いてある訳ではない」
という事から、サイズに関わらずズボンはズボンとして受付をしていますが、
サイズが大きい場合、当然ながら仕上げの手間もその分発生するため、
どうしたものか、と良く考えます



第五十一回:ウエスト120センチの壁

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

バックナンバーは、こちら


第五十一回は、お客様からすると分かりづらいと思われる、
「大きいサイズかどうかの基準」について