クリーニング豆知識

第五十六回:上手な値上げとは

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第五十六回は、賢い値上げのやり方について


消費者の「もっと安く!」という声(要望もしくは圧力)に応えるため、
チラシやCMを見ていると、
毎日のように
「値下げしました!」の文字が躍っています

しかし、当たり前ですが
「値上げしました」というチラシやCMは(ほぼ)ありません

基本的に多くの企業は、
「値下げしました」という事は聞かれなくとも言うけれど、
「値上げしました」という事は、自分からは決して言わず

指摘されても曖昧に誤魔化す、
という対応が定番です(基本的に「価格改定」、と言う表現を用います)


多くの食品を扱うスーパーでは特に、
値上げは頻繁に行われています
ただ、消費者にその事を知らせていないだけです


しかし、以前に大手スーパーのチラシを見ていて、
「このやり方は上手い」と思える値上げの方法がありました

それは、

 値上げする商品を、店頭から撤去する
⇒少し時間を置く
⇒再び店頭に並べる際に、「リニューアルして再登場!」とPRする

というやり方です
勿論、値上げした事は言いません
そして、実際に商品の改良も行い、嘘は言っていない、という事も重要です


元の値段を多くの人は覚えていない
覚えていても、
「品質が良くなったので、値上げしたのかな」と納得する
・・・という、
「多くの消費者に知られずに、値上げする」という点において、
非常に優れたやり方だと思います

以前に、原料の高騰で冷凍食品が相次いで値上げ、
もしくは内容量を減らして価格は据え置き、
という動きがありましたが、その際にも

「内容量を減らした事は一切言わず、
『厳選した素材を使用しています』とCMでPRした」


・・・という、実質的な値上げを逆手に取って、
商品を宣伝した会社がありました

『値上げをする際、
この会社はどういった対応を取るのか?』
を観察すると、
その会社の特色が顕著に表れるため、とても面白いといつも思います