クリーニング豆知識

第五十二回:そのまま収納する前に

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第五十二回は、シミや汚れの付いた衣類を、そのまま収納する事の危険性について


ダウンやコート、オーバーといった、いわゆる
「冬物」は、
一体いつぐらいまでクリーニング店に持ち込まれるのか?

その問いに対する答えは、
「大体、真夏まで」となります

5月はもとより、
6〜7月までダウンやコートを受け付ける事も多くあります


何故このような話をしたのか、というと
「5〜6月を過ぎて、恥ずかしそうに
冬物を持ってくるお客様が、沢山いるから」
です

この事は、お客様が
「実際にお店に衣類を持ち込み、
気持ちを口にした事」
で始めて、こちらが気付く事が出来ます


もし、
「恥ずかしくて結局持って行かなかった」
もしくは
「何となく出しそびれた」というお客様の中に、

洗わずに収納した事で、
衣類をダメにしてしまった方はいないだろうか、と毎年思います



クリーニング店からすると、
初夏の頃になってもダウンやコートは普通に出るので

「暑くなってきても、ダウンやコートが出るのは当たり前」
・・・と考えてしまうのですが

お客様からすると

「こんな時期にダウンやコートを出すのは、自分だけではないだろうか?」

恥ずかしがって躊躇されているような方が、毎年必ずいます

また、収納している間に出来たシミヌキ依頼の際、
『まだ使うかもしれない』と思ってクリーニングに出さずにおいたら、
うっかり忘れて春を過ぎてしまったので、出すタイミングを逃した。

今年になって着ようと思って出してみたら、
古いシミになっていた・・・という事も多くあります


シミや汚れが付いていない場合は、
そのまま収納して問題ありません

問題は、この連載でも度々注意喚起をしているように、
「その時点では、目に見えないシミが付いている」
というケースです

代表的なものはやはり
です
付いた時点では見た目で分からず

次のシーズンになってクローゼットから出してみたら、
エリやソデ、脇に汗ジミが付いていた!というご相談を、毎年受けます

暑い頃になって、ダウンやコートを出すのは、恥ずかしい事ではありません
むしろ、出さずにおいて、後々シミになってしまう危険性があります


2〜3度だけ着たような衣類の場合は、
あまり気にする事はありません

しかし、汚れやシミがついていないか、
着ている間に汗をかいた事はなかったか


お気に入りの衣類を長持ちさせるためにも、
クリーニングに出さずに次のシーズンまで収納する場合、
「これを着ている間、汚れやシミをつけなかったかな?」
・・・
と、一度考えてみて下さい


ダウン・コート・オーバーと言った
「一番外側に着る衣類」の場合、雨ジミ

ワイシャツやブラウスなど、エリやソデに直接触れる衣類全般は、
エリ・ソデの汗と皮脂汚れ

セーターやブレザーは、
脇の汗ジミに要注意です