第五十一回:ウエスト120センチの壁
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第五十一回は、お客様からすると分かりづらいと思われる、
「大きいサイズかどうかの基準」について
当社が使用しているズボンの仕上げ機械は、
ウエストの太さが一定以上になると、セットする事ができません
そのため、そのような大きなサイズのズボンに関しては、
機械で仕上げている腰周りの部分を、
全てアイロンによる手作業で行っています
では、その「大きめ」の境目は一体何センチなのか?というと
120センチです
115センチでは機械にセットしづらいものの、何とか固定する事が出来ます
しかし、120センチを超えると何をどうやっても無理です
腰周りの仕上げを手作業で行い、
また大体そういったズボンは、股下の部分にもシワが寄っており
その部分もアイロンで伸ばす必要があるため、
通常サイズのズボンと比較して、2倍以上の手間がかかります
以前から、
「大きなサイズの衣類は、
特別料金をいただく必要があるのでは?」
・・・という事は、当社でも度々議論になりました
しかし、「大きな」とは具体的にどのようなサイズを基準とするのか
ズボンであれば、ウエスト○○センチ、
という表記があるため分かりやすいのですが、
オーダーメイドのものは、サイズが書いていない場合もあります
では、コートやオーバーといった衣類は、
3LやXLといったサイズを基準とするのか、
サイズ表記がない場合、身長で判断するのか、
その表記もない場合どうするのかなど
「どこからが、大きなサイズ?」
という判断基準を品質表示だけで決める事が難しい事から、
当社では「長さ」で判断しています
腰あたりまでのコートやオーバーなら、
「短めのコート・オーバー」
(当社では「半」という表記を用いています)
セーターでは、腰までなら普通のセーター
それ以上の長さでは、「セーター 大」というように、
誰でも分かりやすく、かつお客様に説明しやすいという事を考えた場合、
「長さで区切るしかない」というのが、当社としての判断です
そのため、素材が特殊なものでなければ、
ウエストが80センチであっても、
120センチであっても、ズボンはズボンです
この、「どこからが、大きいサイズ?」という判断基準は、
多くのクリーニング店が抱えている課題ではないでしょうか
大手チェーン店では人の出入りが比較的激しいため、
受付の店員さんがベテランであっても新人であっても、
「誰にとっても分かりやすくする」という意味では、
ウエストで区切るのは分かりづらく、ミスの元となります
しかし、仕上げの手間を考えた場合、
「ウエスト○○センチ以上は追加料金」とはっきり決めておかないと、
「2倍以上の手間がかかる衣類を、標準料金で受け付けて良いのか」という、
コスト上の問題が発生します
当社では、「ウエスト120センチ以上のお客様の割合は非常に少なく、
またズボンの品質表示に、必ずウエスト○○センチと書いてある訳ではない」
という事から、サイズに関わらず
ズボンはズボンとしてお受けしていますが、サイズが大きい場合
当然ながら仕上げの手間もその分発生するため、
どうしたものか、と良く考えます