クリーニング豆知識

第四十七回:意味のある値下げとは

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第四十七回は、「売る側から見た値下げ」について



「○○% OFF!」
「今なら半額!」

テレビやチラシ、インターネット上で、
今日も値下げの情報が飛び交っています

『買う側』から見ていると中々分からないのですが、
『売る側』の視点で
「なぜ、今値下げを行うのか?」を考えると、
売る側の事情が見えてきます


上手いと思うのが、
マクドナルド

ナゲット半額やハンバーガー無料券で集客し、
それ以外のオーダーできちんと利益を出しています

2011年も、売り上げ・客数ともにアップしたようです
(その後、異物混入問題が発生し、低迷していますが)

ただし、以前に
ハンバーガー80円で販売していた頃は、
利益を出す事が出来ず業績が落ち込み、高単価へシフトしたそうです


マクドナルドの優れた点は、ブランドイメージを保ったまま

「マック=安い」から、
「マック=ボリュームのあるハンバーガー」へと、
消費者側のイメージを変えてしまった事です

しかし、
「値下げ」というものは、
売る側からすると一種の麻薬のような、
とても危険なものであるとつくづく思います


例えば、ある商品やサービスを30%OFFで売ったとします
それにより、売れ行きが40%アップしました

お客さんの数が4割増しなので、大忙しです

しかし、それで儲かったのか?と言うと・・・

0.7(単価)×1.4(客数)=0.98

なんと、売り上げが下がっています


実際には、

「目玉商品で集客し、利益率の高い製品のついで買いを誘う」

と言った売り方をするため、
この数字の通りに売上が推移する訳ではありません
(スーパーの、特売の卵などが良い例です)


また、
「割引しなければ、そもそも来店しなかった層」も存在するため、
この計算式が絶対正しいと言う事もありません

しかし、30%OFFの商品については、
40%増しで売れたとしても、
通常より利益が出てはいないのです

それでも、忙しいので何となく儲かった気になってしまう
そして、値下げ期間が終了し、しばらく経過したあと・・・
「値下げした時の忙しさ」が忘れられず、
儲からないのにまた値下げしてしまう。正に悪循環です


今の時代、値下げには理由が必要です
ただ単に安い、では消費者は反応しなくなってきています

当社は毎年、3月にダウン製品のクリーニング30%OFF、
4月に20%OFFを行っていますが

これは、
「割引する事で、当社を利用しようという、
『心理的な敷居』を下げ、当社の技術を一度利用してもらう」

という考えがあっての値下げです

また、ユニクロのような、比較的安く買えるダウン製品であっても、
きちんと毎年シミヌキをしてキレイにしてから収納する事で、
3年も4年も使えますよ、という情報の発信を兼ねています


世の中に溢れる、「今だけ値下げ!」という情報

売る側の視点に立ち、
「なぜ、今値下げしているのか?」を考えると、
それぞれの思惑や事情が透けて見え、非常に面白いと思います