第四十二回:ドライマークの真実
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第四十二回は、品質表示のドライマークについて
クリーニング店は品物をお受けした際、どこを見るか
基本的には品質表示です
その品物がドライクリーニングに適しているのか、
それとも水洗いか、もしくは両方とも可能な場合はどうするのか
各社によって対応は様々ですが、品質表示を参考にしている事は確かです
しかし、その品質表示の一部が
あまり意味を持たないものであれば・・・
という内容の記事が、クリーニングの業界紙に掲載されており、
多くのクリーニング店を悩ませているであろう点が、
ズバリ指摘されていました
水洗い可能のマーク(水の入ったおけ、
もしくは四角い洗濯ネットのようなマーク)に、
×がついていないという事は
基本的にはその品物を水洗いすると、
極端に縮んだり、色落ちしたりしない・・・と受け取ります
現在のJIS規格(洗濯表示が含まれる規格)では、
水洗い表示の判定の場合、家庭用洗濯機を使用して、
実際に品物を洗浄した上で、水洗い可能か不可能かという事を判定します
しかし、ドライクリーニングの表示の場合、
ドライクリーニングの機械を使用するのではなく
染色堅ろう度試験機に、
完成製品ではなく生地の一部を入れて
ドライクリーニングの洗剤に対する「色落ちの度合い」
だけを試験するよう、定められています
つまり、生地の一部が
ドライクリーニングの洗剤に対して色落ちしなければ
製品をドライクリーニングした場合に、
表地が剥がれても、縮んでも、風合いが変化しても、
「ドライクリーニング:○」という品質表示になります
市場に流通している製品の全てが
この考えに基づいているという事はなく、むしろ逆で
当社で扱う品物のほぼ全ては、
「品質表示通りに洗えば問題ない」というものです
(この辺りは、日本製品の品質の良さが前提であり、
海外製ではまた状況が違います)
しかし、一度ドライクリーニングしただけで
極端に縮んでしまうような品物であっても
染色堅ろう度試験機の試験をクリアしていれば、
品質表示が間違っているという事ではありません
しかし、一度洗っただけで
着れなくなってしまうような品物を、誰が買うのでしょうか
当社は品質表示を確認して洗い方を決めていますが、
基本的には洗う前に色落ちのテストを行い
問題がありそうな品物は、
お客様の確認を頂いてから洗い仕上げを行っています
実際に、そうする事で防げた事故、
という事例が数え切れない程あります
この品質表示規定は1968年に
定められたものであり、それから実に40年あまり
衣類が、大きな変化を遂げない訳がありません
品質表示は確かに、
洗い方を決める情報の一つとなります
しかし、鵜呑みにはしない事が重要です
追記
2016年12月にJIS法が改正され、
品質表示のマークも、より現実に即したものへと変わります
詳しくは、グーグルで「新JIS表示」で検索すると一番上に出て来る、
政府発表資料のpdfファイルを参照して下さい