クリーニング豆知識

第四十一回:夏場の作業場

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第四十一回は、夏場におけるクリーニングの作業場について


当社のビルは、1階が受付および奥にドライクリーニング機器
2階に仕上げ機械および水洗機が配置されており、
基本的に仕上げ作業は、全て2階で行っています


そして、クリーニングの仕上げ機械というものは、多くが蒸気を使用します
これは、
「蒸気で伸ばす ⇒ 熱で固定」、という作業を効率的に行うためです
そのため、機械から高温の蒸気が噴出し、夏場はかなりの暑さになります

1階受付に冷房があるため、
1階・2階の各所に冷房があると思われがちですが、
実は1階にしか冷房はありません

つまり、高温の蒸気が噴出す機械が
何台も置いてある2階には、冷房がありません


代わりに、
「スポットクーラー」と呼ばれる、
機械に繋がれた送風口から、
風を送る装置のようなものが設置されています

真夏ともなると、2階の温度は35〜38℃程度まで上昇しますが、
何故2階にクーラーを設置しないかと言うと、
天井埋め込み式であれ、壁に設置する形であれ、
そのための場所が無いからです


ただ、クーラーさえ設置すれば
良いかと言うと、そうでもありません


以前、クリーニングの仕上げ機械を製造している
メーカーの工場見学へ伺った際、
その工場では、いくつかの場所にクーラーが設置されており、
夏場であったにもかかわらず、それほど暑さは感じませんでした

ただし問題点が一つ
クーラーの近くは寒く、遠くは調度良いのです

スーパーでは、人が一箇所に留まるレジ付近に、
天井埋め込み式の冷房を設置している所が多く見られますが、

外から来た買い物客は涼しくて調度良いと感じても、
その場所で、ずっとレジ打ちをしている従業員は寒い思いをしている、
という事は多いのではないでしょうか

そのため、当社においても単純に

「暑いから冷房を設置しよう」
という訳にもいかず、

ずっとスポットクーラーに頼っています
これは、多くのクリーニング店の作業場にも言える事です


ただ、この蒸気
冬場には、適度な加湿効果があり、
加湿器いらずの便利な機械とも言えます

冬場は風邪対策になるけれど、夏場は暑さの原因となる
蒸気との上手い付き合い方は、
クリーニング店の永遠のテーマと言えるでしょう