クリーニング豆知識

第三十五回:「変えること」は良いことか


「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

バックナンバーは、こちら


第三十五回は、前回の続きです



前回のコラム
で、バブル期(1995年当時)と比較して、
現在はクリーニング需要が半減しており、
この減少した需要が急激に回復することはない・・・という事を述べました

その事に関して、クリーニング業の現場では以前から、
現役社長や幹部である
「バブル期を知っている世代

新入社員や社長の跡継ぎのような

「バブル期を知らない世代」
との間で、
随分と溝がある、と言われてきました


「バブル期を知っている世代」は、
お店を構えているだけで、どんどんお客様が来た時代を知っているため、
「今は不況で仕方がないけれど、景気が上昇すればきっと何とかなる」と、
考えているような方が(全てではありませんが)結構います

しかし、
「バブル期を知らない世代」は、
そもそもお客さんがたくさん来ていた時代をその目で見た事がなく、

仕事を始めた時点で、既に不況でデフレの状態なので、
「店を構えているだけでお客様が来た」状態を想像出来ません

そこで、
「需要がいきなり回復する事はない」と考えて、
次々に新しい事をしようとする若い世代と、
「今までのようにやっていれば、きっといつか景気が上向く」と考えている、

現役社長や幹部との間に、気づけば大きな溝が出来ている、
・・・というような状況がたくさんあります


しかしこの問題
実際の所、どちらが正しいとも言い切れない部分があります


当社はバブル期の頃と比較して、
設備や仕事の進め方など、全てが変わったか?というと

そんな事はありません

そして、その
『変えていない』
部分がマイナスになっているか?というとそうでもなく、
逆にお客様が当社を選ぶ基準になっている、と言う場合もあります

例えば、
「丁寧なシミヌキ」と、「人の手による仕上げという2点は、
バブルの発生よりもずっと前、創業時から当社が大切にしている事ですが、

バブルの頃も、不況になってからも、
多くのお客様から支持していただいている、
重要な要素である事に変わりはありません


ただ、何も変えていないか?というとそうでもありません

ワイシャツの洗い方は、バブル期の頃と比較して、
基本的な点はいくつか共通している部分はありますが、
洗浄時間や脱水時間、使用する洗剤や仕上げ機など、
多くの点で改良・改善を重ねています

バブルの頃から何も変えていない
という事では確かに生き残っていけない
では、
バブルの頃から何もかも変えてしまえばいいのか?
・・・というとそうでもない


「良い点はきちんと残した上で、改良できる部分はどんどん変えればいい」
65周年を迎えた今、改めてそう感じます