クリーニング豆知識

第三十三回:切り取らないで!品質表示

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

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第三十三回は、品質表示について


持ち込まれた衣類が、ドライクリーニングと水洗いの、
どちらに適しているのかを、
クリーニング店はどこを見て判断しているのか。

基本的には、品質表示です


クリーニング店だからといって、「洗いのプロ」のような職人さんが、
手触りや見た目で洗い方を判断している訳ではなく、
基本的には
品質表示に書いてある通りに処理しています


当社の場合、品質表示を見て
『ドライクリーニングのみ』の衣類はドライクリーニング
『水洗いのみ』の衣類は水洗い

『ドライクリーニング・水洗いの両方が可能』な衣類は、
基本的に水洗いをしていますが
(その方が、汗やホコリ汚れが良く落ちるため)、
生地の組成によっては、ドライクリーニングをする事もあります


しかし、品質表示の無い場合、どうするのか
クリーニング店側からすると、

「どう洗えば良いのか分からない」
となります

結果、洗う事により変色・脱色・縮みが発生するかもしれない、
という事をご了承の上で洗う事になります


以前から当社でも対応に苦慮しているのが、
この
「品質表示が無い」というケース


オーダーメイドなので元々ないものであったり、
肌に触れて気になるので自分で切った、
など表示が無い理由は様々ですが

このような衣類は、
クリーニング店側としても
「どう扱えば良いのか」が分からないため、
洗う事により何が起こるか分からないという、
非常に
「怖い」存在です

クリーニング店に出す事はなく、自宅で洗っている衣類は問題ありませんが、
大事な衣類に関しては、シミヌキの際の処理方法の判断基準にもなるため、
品質表示は切り取らない方が良いでしょう


以下に、前述した3つの表示ごとの特徴を挙げておきます


◎ドライクリーニングのみ
⇒ドライクリーニングは油系の汚れを良く落とす反面、
 水溶性の汚れには弱いので、食べこぼしや汗の付着には注意が必要です
 
 特に、シャツ系で選択表示がドライクリーニングのみの場合、
 
エリやソデの皮脂汚れが落ちにくく、
 気付いたら変色していた、という事もあります


◎水洗いのみ
⇒水洗いは汗やホコリ汚れを良く落とし、
油系の汚れも付着してすぐであれば、
 
 シミヌキして洗ってしまえば落ちやすい反面、
 
繰り返し水洗いをしていると、型崩れや縮みが発生する恐れがあります

◎ドライクリーニング・水洗いの両方が可能
⇒このような衣類の中には、水洗いが可能と言いながら、
 
水に入れると、明らかに色落ちや縮みが発生する衣類もあるので、
 注意が必要です

 
 毛や、ポリエステル(あるいは毛・ポリエステル混合)
 のセーター・ズボンなどのほか、
 多少の縮みや色落ちを気にしない、
 外国からの輸入品にも見られます
 
 ドライクリーニングでの処理が比較的安全ではありますが、
 ドライクリーニングのみの衣類と同様、
 食べこぼしや汗汚れが残留する恐れがあります