クリーニング豆知識

第二百十八回:「魔法の言葉」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、
このコラムでは、クリーニング業者から見た
衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第二百十八回は、「便利な言葉」について


クリーニングにシミ抜きで出した衣類に
「このシミは落ちませんでした」

・・・と言うタグが付いて帰ってきた
と言うことは多くの方が経験していると思います


ただ、この
「シミは落ちませんでした」と言う表現
クリーニング店側からすると
便利な
「魔法の言葉」です


実際には

@脱色・変色のリスクがあるので、これ以上は出来ない
Aそもそも落とすことが出来ない(ペンキなど)
Bトラブルになる可能性があるため、シミ抜きをやりたくない


・・・のうちどれかである場合がほとんどです
@〜Bのどのパターンでも
「シミ落ちません」のタグを付けて返すことが出来ます

つまり、クリーニング店としては
「トラブルになりそうなのでやらないけど
そうは言えないので、『落ちません』のタグを付けて返した」

と言う対応も出来る・・・ということです


多くの場合、
「シミは落ちませんでした」と言うタグが付いて
クリーニング店から返ってきた場合
@もしくはAだと思うでしょう
ただ、実際にはBの場合も結構あります

何故断言するかと言えば
「よそのクリーニング店に出したら
『シミ落ちません』のタグが付いて返ってきたんだけど・・・

どうにかならない?」と言うご相談を
数えきれないほどお受けして来たからです


そして、その衣類に付いたシミ・汚れが
『割とカンタンなシミ抜きで落ちた』と言うケースは
今までたくさんあります

つまり、
「カンタンなシミ抜きすらやっていない」
と思われるケースがたくさんある・・・と言うことです


例えば、
時間が経過して黒くなった血のシミ
こちらは、酵素の作用で分解するか
もしくはせっけんと水だけで落ちる場合もあります

あるいは
サビ
サビは一般には販売していない
「サビ専用シミ抜き剤」
かなり簡単に落とすことが出来ます


また、
皮脂によるエリ・ソデの黄ばみ
漂白処理で落とせる場合もありますが

漂白処理はかなり強いシミ抜きのため
脱色もしくは脆化(生地がもろくなる)リスクがあります


これらのリスクを考えると
「頑張って落としてもあまりお金にはならない
むしろ脱色・変色が発生して
トラブルが発生する可能性を考えると

『シミ落ちません』のタグを付けて返した方が無難」
・・・と言う結論になります


多くの消費者がクリーニング店に
シミ・汚れの付いた衣類を出して
「シミ抜きお願いします」と言えば
シミ抜きをしてくれるだろう・・と思いがちですが

「リスクがあるので、そもそもやらない」と言う判断をする
クリーニング店は少なくありません

これは会社としての経営判断であり
どの考え方が『良い・悪い』
・・・ではない、といつも思います



要は、消費者側もクリーニング店の
「このシミは落ちません」と言う
便利な
「魔法の言葉」が付いて服が返って来た場合

その言葉を鵜呑みにせず
「このクリーニング店は、どこまでやるのか」を見極めて
使い分ければいいと考えています

店頭で受け付けをしているパートさんは
大抵の場合、そこまで深い知識はありません
(中には、衣類のプロ並みの知識を持つ方もいます)
店頭で聞いてみるより、一度出してみた方が確実でしょう