第二百十四回:「同じ表示・違う結果」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、
このコラムでは、クリーニング業者から見た
衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百十四回は、「品質表示」について
業務用クリーニング、あるいは衣類の家庭洗濯において
「一度、痛い目に遭わないと実感出来ない」
・・・と言うことはたくさんあります
例えば、こすれ(摩擦)による脱色
リュックやバッグを毎日使用していると
一番上に来ている服の、肩や背中の部分が
繰り返しの摩擦によりすり減って来ます
素材の種類により、発生しやすい・しにくいがあり
実際に発生してみないと
「バッグ・リュックの着用により、こうなる場合がある」
と言うことが、中々実感出来ないと思います
そのような「痛い目に遭わないと実感出来ないこと」において
一度でも発生すると、服をダメにしてしまう可能性があるため
十分気を付ける必要があることが・・・
「同じ品質表示でも、同じ結果になるとは限らない」
・・・と言うことです
分かりやすいのが「手洗い表示」です
これは「水の入ったおけに、手」のマークであり
『洗濯機ではなく、手洗いであれば水洗い可能』と言う意味です
今まで、数えきれないほど
この「手洗いマーク」の衣類を洗って来ましたが
驚くほど、衣類によって結果が違います
形状記憶衣類と同じように、ほとんどシワが寄らず、
型崩れも発生しない衣類があれば
全体にシワが寄り、アイロンをしっかりかけても
若干のシワが残るような衣類もあります
つまり「同じ手洗い表示だからと言って、
洗って同じ結果になるとは限らない」と言うことです
これは、中々実感しづらいことだと思います
ではどうすれば良いのかと言うと
基本的に「品質表示を鵜呑みにしない」が一番です
『水洗い可能』と言う表示が付いてはいるけれど
水で色落ちのテストをすると、かなり色落ちする衣類
もしくは、『ドライクリーニング可能』となっているけれど
ドライクリーニングの洗剤で色落ちのテストをすると
ハッキリと色落ちが見られる衣類はたくさんあります
判断が難しいのが
「ドライクリーニング・水洗いの両方が可能な衣類」です
ドライクリーニングでは、
型崩れや縮みがはあまり発生しない代わりに
汗や皮脂、ホコリ汚れはそこまで落ちません
水洗いでは、汗や皮脂、ホコリ汚れを良く落とす代わりに
型崩れや縮み、あるいはシワが寄るリスクがあります
とても大事にしている衣類の場合
基本的にはドライクリーニングの方が安心です
ただし、汗・皮脂が落ちないため
時間経過による、脱色・変色が発生するリスクがあります
一度、お持ちの衣類の『品質表示』をチェックしてみて下さい
いざ、シミ・汚れを付けてしまった
すり減りのようなものが見られる
あるいは、カビが生えたと言う場合
「この服はこう洗う」と自分の中で整理しておくと
慌てずに対処出来ます