クリーニング豆知識

第二百十二回:「同じ素材・同じ服・違う表示」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、
このコラムでは、クリーニング業者から見た
衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第二百十二回は、「品質表示の違い」について



クリーニング事業者向けの講習会で、怖い話を聞いたこともあり
以前からこちらのコラムでも指摘していた
「海外と国内向け品質表示の違い」について深堀りします

怖い話と言うのは、ユニクロやZARAと違って
「生産する会社」「販売する会社」が別の場合

海外で生産された衣類を、国内の企業が
「輸入して販売する」と言う形になります


その際、元々付いていた品質表示とは別に
「国内向けの品質表示」を付けることが多々あります

多くの場合、海外の表示と日本の表示は同じですが
たまに
「全然違う表示」が付いていることがあります
クリーニング事業者からすると、要注意衣類です


良くあるのが、海外の品質表示では
ドライクリーニング・水洗い両方が可能となっていて
日本国内向けの表示ではドライクリーニングのみ

・・・とされているものです

いわゆる
「高級ブランド」とされているブランドの
Tシャツやブラウス、サマーセーターのような
夏物に非常に多く見られます

夏物なので夏場に着るものであり、汗が付きます
しかし、品質表示通りに洗っている限り汗は落ちません
そしてある日、蓄積した汗の成分が
「黄ばみ」となって出てきます


しかし、水洗いをするとなると
「品質表示にない洗い方」となるため

クリーニング店では、大抵の場合断られるので
リスクを承知で自分で洗ってみるしかありません

その結果、縮みや色落ちが発生したとしても
誰も責任を取ってはくれない・・・と言うことになります


今回聞いた怖い話と言うのは
海外の品質表示:水洗い可能
国内の品質表示:クリーニング不可


・・・となっている服のことでした
同じ素材・同じ服なのに、品質表示が違う訳です

そこで、海外の品質表示を見たクリーニング店が
海外の表示を参考に水洗いを行った所、
全体に色落ちが発生

品質表示に記載してあった
「輸入販売元」に連絡した所
「品質表示ではクリーニング不可となっているのだから、
当社に責任はありませんよ」
と言われた・・・とのことです


クリーニング不可、と言うのは
来ている時に汗をかいても
シミや汚れが付いても、カビが発生しても
洗ってはいけない、と言うことです

汚れたら捨ててね・・・と言うことでしょうか


このような衣類は、世の中にたくさんあります
メルカリなど、オークションサイトが非常に怖いと思うのは
このような
「おかしい品質表示」を確認出来ないことです

クリーニングに従事する人間として
基本的に衣類は

@世間一般に知られたブランドのものを
A正規販売店で購入する


・・・と言うことをオススメします

古着やオークションサイトでの購入は安価かつ便利ですが
正規販売店で、新品を購入して大事に使う方が
結果として安上りな場合は(衣類に関しては)多々あります



また、製造元の表示と販売元の表示が違う場合
「どちらも鵜呑みにしない」が鉄則です

どちらか、あるいは両方が
自分に取って都合の良い表示を付けていたり

「世界的に見ると標準だけど、日本では通じない基準」
・・・のような品質表示は多々あります


世界的には、
『多少の色落ちや縮みは気にしない』と言う国が大半です
しかし、世界一厳しいと言われる日本人の基準からすると
「不良品」とされるような服は、世の中にたくさんあります

この
「文化の違い」は、実際に遭遇してみないと中々分かりません
品質表示が複数付いていて、良く見ると細かい違いがある場合

品質表示の内容を調べて、
「何故この表示が付いているのか」を考えると・・・
製造元・販売元の思惑が透けて見えることがあります