第二百四回:「匂いはどこまで落ちるのか」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百四回は、「匂いはどこまで落ちるのか」について
前回は「クリーニング後の匂い」について取り上げましたが、
今回は「クリーニングでどこまで匂いは落ちるのか」について
リセッシュやファブリーズと言った、噴霧式の消臭剤
あるいは、香水や柔軟剤は液体です
これは、水などに香料や消臭成分を含ませているからであり
つまり、これらが原因の匂いは
水洗いをすることである程度、落とすことが出来ます
一方、『何らかの匂いのある環境』に長く滞在したこと
またはタバコの匂いなど、自分の意思で付けた訳ではない
環境によって付いた匂いは、水洗いしても中々落ちません
香水や消臭剤は「表面に付いた」程度であるのに対して
環境による匂いは、「内部まで浸透している」
状態であることが多いため、中々に厄介です
柔軟剤の成分も、添加して洗うことで内部まで浸透していますが
柔軟剤が、そもそも液体に成分が溶けた状態であるため、
水で洗うと匂い(香り)の成分も、一緒に落ちることが多々あります
つまり、「匂い=水洗いである程度落ちる」ため
ドライクリーニングのみの衣類に強い匂いが付くと、
二度と取れなくなる可能性がある、と言うことでもあります
ドライクリーニングは、主に石油を原料とする洗剤で洗うため
油汚れに強い一方、水溶性の汚れはほとんど落ちません
一方で、ワイシャツクリーニングは
@温度を上げて洗う(当社では40℃)
A汚れを良く落とす、強めの洗剤を加える
B白さを浮き立たせるため、漂白剤を入れて洗う
・・・と言った理由から、匂いが落ちやすい傾向にあります
体臭・加齢臭も、何度も洗うことで匂いが大分薄くなります
ただ、タバコの匂いは例外で
薄くなってきているけれど、匂いがまた付くのか
あるいはそもそも落としにくいのかは、
ハッキリ分かりませんが
タバコの匂いが一度付いたワイシャツは、
何度洗っても匂いが落ちません
そして、匂いが落ちやすいワイシャツ洗いで
落ちないと言うことは、他の衣類に付いた
タバコの匂いは、基本的にもう落ちないと言うことです
リセッシュやファブリーズと言った消臭剤も、
一部は香料を含んでおり、消臭するつもりでかけすぎると
今度はその匂いが付いて、取れなくなる可能性があります
香水や柔軟剤は、その人にとっては良い匂いでも
周囲の人にとっては、非常に不快な匂いかもしれません
そして、このコラムで何度も取り上げていますが
今の時代、「タバコの匂いがする」と言うだけで
嫌われたり、信用されなくなるリスクがあります
自分の匂いに、自分で気づくことは中々難しいため
周囲の人に不快な思いをさせないためにも、匂いに関しては
「気にしすぎるくらいで丁度いい」と言う考えで良いかと思います