第二百三回:「クリーニング後の匂い」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百三回は、「クリーニングと匂い」について
前回は「男性用香水」について取り上げましたが、
今回は「クリーニング後の匂い」についてです
毎年、衣替えの季節になると、
「久々にクローゼットから出してみたら、なんか匂う。
おたくにクリーニングに出して、そのまま仕舞ったけれど、
この匂いは何なのか」と言う、お問い合わせを受けます
基本的に、クリーニングから返ってきた服が
何だか匂うな・・・と言う時
@蒸気の匂い
A工場の匂い
Bドライクリーニングの溶剤
この三つの要因が考えられます
このことは、検索してもあまり出てこない情報であり、
全然知られていないな、といつも感じます
今回は、この三つについて解説します
@蒸気の匂い
ポットで沸かしたお湯の蒸気に、匂いはありませんが、
蒸気そのもの、あるいは蒸気をあてることにより
発生する匂い、と言うものがあります
大抵は汗や皮脂など、人間の体から分泌される物質が
蒸気をあてることにより、
匂いを発するようになった場合がほとんどです
汗で濡れた状態の服からは匂いがしますが
乾くとあまり匂わなくなる・・・と言う現象と大体同じです
蒸気は基本的に水分であるため、
「水分を含んだことにより、匂いが発生する場合がある」
と言うのが、クリーニングから返ってきた服が
何だか匂う・・・と言う原因の一つです
ただ、蒸気の水分が抜けると匂いも弱まるため
乾燥させても同じ匂いがする場合、
原因は蒸気ではない、と言うことになります
A工場の匂い
クリーニングの工場は、夏場は特に高温になるため
換気を十分にしていないと匂いが籠ります
その「工場の匂い」が、
乾燥させるため、しばらく工場内に干しておいたダウンや
分厚いオーバー・コートに『移る』ことがあります
ただ、@の蒸気の匂いなのか、工場の匂いなのか、
返って来た服からは判別出来ません
こちらも、まずはしばらく干しておいて、
乾燥させてみないと、原因が分からないことが多々あります
まだ匂いが残っている・・・と言う場合
ファブリーズやリセッシュと言った、
噴霧型の消臭剤をかけてみて下さい
ただし、かけすぎると逆にシミになります
「上から落とすように、少しだけ吹き付けて、
表面が少し湿るくらい」を目安にしてみて下さい
「近距離から、直接」吹き付けるのはキケンです
また、乾いた後に触ってみて
ゴワゴワしている場合は吹き付け過ぎです
この「ゴワゴワした状態」は
水洗いをすると取れますが、水洗い出来ない
スーツやオーバー、コートがこの状態になると
生地を傷めず、ゴワゴワだけを取ることが
非常に難しい場合があります
ご注意下さい
Bドライクリーニングの溶剤の匂い
世の中にはほとんど知られていませんが、
この匂いは「かなり危ないと言うサイン」です
どういう匂いなのか、言葉で説明するのは難しいのですが
「今まで経験したことのない、鼻にツンと来る匂い」と言うのが
一番近い表現ではないかと思われます
ドライクリーニングの溶剤の匂いがする
⇒ドライクリーニングの溶剤が残留している
⇒そのまま着ると、炎症を引き起こすことがある
・・・と言う、非常に危険な状態です
自分だけで判断出来ないと言う場合、
必ず身近な人にも相談して下さい
ただし、ドライクリーニングの溶剤は揮発性のため
ハンガーにかけて一週間ほど干しておけば
基本的にはなくなると考えて大丈夫です
上記3つが、大抵の場合に考えられる
「クリーニングから返って来た直後の匂い」です
ただし、長期保管した場合、クローゼット内の匂いや
カビ、溜まった湿気などの匂いの可能性もあります
特に、触ってみてジメっとしている場合
クローゼット内にカビが発生している可能性があります
一緒に入れている服を、念のため点検してみて下さい