第二百二回:「男性用香水」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百二回は、「男性用の香水」について
ここ10年ほどで、スキンケア商品など
今まで一般に『女性が使うもの』とされていた製品・サービスの、
『男性版』がかなり一般的になりました
一方、今までそのような商品を全く使ったことがない男性は
いきなりそのような商品を買ったとしても
「どの程度使えば良いのか」が良く分からず
何となく目分量で使っている・・・と言う方も多いかと思われます
そういった製品・サービスで
「この傾向はちょっと良くない」と以前から感じていたのが
「男性用香水」です
売れている「大人のマナー」のような本を読むと、
基本的に「匂い」は「無臭が良い」とされます
匂いには、好き・嫌いの個人差が非常に大きいため
自分にとっては『良い匂い』でも、
周囲の人にとっては『イヤな匂い』かもしれません
そのため、一般的なマナーとしては
「匂いがない」状態が良いとされています
また、普段から清潔感があり、
『この人は、匂いに気を付ける必要がないのでは』
・・・と思える人が
実は周囲に不快な思いを与えないよう、
匂いに非常に気を遣っている・・・と言うことも
マナー本で良く言われていることです
ただ、今まで匂いに気を付けて来なかった人が
男性用香水を買って、これからは匂いに気を付けよう・・・
と考えたとして、「どれくらい使うのか」が分かりません
結果として、過剰に香水を服にかけてしまい
「すごい香水の匂いがするスーツやコート」が
ここ数年で増えて来ています
特にタバコを吸う人の場合、香水とタバコの匂いが混ざり
タバコを吸わない人からすると特に、
何とも言えない不快な匂いになります
問題は、この「香水の匂い」が多くの場合は水溶性であり
ドライクリーニングのスーツやコートに付いた匂いは
品質表示通りに洗っている限り、中々落ちないと言うことです
(時間の経過により、薄くなっていくことはあります)
逆に言えば、水洗い可能な衣類
例えばワイシャツやポロシャツに付いた香水の匂いは
品質表示通りに水洗いをすれば、かなり落ちます
また、肌に塗る系のクリームについても
適量が分からず、付けすぎてしまい
余剰分がスーツのエリ部分に付いて、
シミになっている状態が見受けられます
スキンケアのクリームの場合、
多くは油系の成分を含むため、こちらは逆に、
ドライクリーニングの溶剤でシミ抜き+ドライクリーニングで
かなり落とすことが可能です
今後、男性用の化粧品や香水は
ますます一般的になって行くと思われます
ただ、パッケージの説明を読んで
「適量を使うこと」を心がけてみて下さい
お気に入りの服をダメにしてしまう危険性があります
匂いに関しては、信頼のおける人に
(出来れば同性・異性の両方)
「自分の匂いは気にならないか」を聞いてみて下さい
匂いくらいで・・・と思うかもしれませんが
匂いが原因で周囲から嫌われていて
それに気づかないままずっと過ごしていると言うのは
人生全体で見るとものすごい損をしているのでは・・・と
クリーニング業に従事する者として思います
正に、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、です