第百九十七回:「色落ちしそうな服」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百九十七回は、「色落ちしそうな服」について
当社では、今まで数えきれないほどの
「色落ちする服」をお受けして来ました
ただし、一口に「色落ちする服」と言っても、
〇表示通りに洗うと色落ちする
〇表示が付いていないため、正しい洗い方が分からない
〇了解を得た上で、表示にない洗い方を行うと色落ちする
・・・と、いくつかのパターンがあります
以前からこちらのコラムで何度か取り上げていますが
基本的に「品質表示がない服」は、
非常にリスクが高い、と言って間違いありません
そもそも「正しい洗い方」が分からないため、
「正しいと思われる方法」で洗うしかありません
その結果、色落ちが発生することが多々あります
ただし、表示がない場合は、こちらも注意する事が出来ます
色落ちをチェックしてみて、お返しする事も良くあります
本当に怖いのは、「表示通りに洗うと、色落ちする服」です
更に、単に色が落ちるだけでなく
一緒に洗った、他の衣類にまで色が移る事もあります
そこで、今までの経験から、
「こう言った服は危ない」
・・・と言うパターンを、挙げておきます
@色
今まで色落ちが見られた服の多くは
紺や黒、こげ茶と言った、いわゆる濃色
もしくは、黄色や赤と言った、原色系です
全体が黒や紺で統一されている服が多く
逆に「BRICK HOUSE」のワイシャツのような、
エリの部分だけ紺や黒の生地、のような服は
あまり色落ちしたケースはありません
以前にお受けした、世界的に有名なブランドの服で
「エリとソデ先が紺、他は白」と言う服がありました
その服を品質表示通りに洗ったところ、
エリとソデ先の、紺の部分から色落ちが発生して、
白の部分に点々と色移りしていました
かなり珍しいケースではありますが、
「同じ服の、別の部位から色移りする」と言う事も、
起こりうると言うことを、頭の片隅に置いておいて下さい
そう言った意味で、部位によって極端に色が違う服は、
全体が同じ色の服よりも、高いリスクがあります
A種類
水洗いでは、ジーンズやTシャツ、次点でセーター
ドライクリーニングでは、オーバーやコートが、
色落ちの発生するケースが、比較的多く見受けられます
ジーンズは、「洗うたびに色落ちして、色の変化を楽しむ」
・・・と言う文化があります
そのため、最初に洗う時は特に注意が必要です
Tシャツは、国内ブランドのものは大抵は大丈夫です
ただし、海外ブランドのものを、
ネットで注文して個人で購入した、と言う場合は要注意です
一方、商業ドライクリーニングによる色落ちは、
ジーンズやTシャツは、大抵ドライクリーニング出来ないため、
オーバーやコートと言った、上着に多く見られます
B素材
綿や麻と言った、「固い」素材の服に、色落ちは多く見られます
逆に、シルクやポリエステルと言った、
「柔らかい」素材の服は、色落ちがあまり見られません
また、洗濯による色落ちではなく
「摩擦による色移り」が発生する場合があります
多くの場合、服ではなくバッグやリュックが原因ですが
ジーンズ⇒セーターやTシャツなど
服から服へ、洗わなくても色移りする場合もあります
そして、夏場に多く見受けられるのが
「汗による色移り」です
ポケットに入れたハンカチや、首に巻いたスカーフ
また、ネクタイでも発生する事が多々あります
一見すると色落ち・色移りしそうにない服や小物が、
汗によって濡れた状態が続くことで、色が移る場合があります
以上、まとめると
@色は紺や黒の濃色、もしくは赤や黄色と言った原色
A種類はジーンズやTシャツ、次点でセーター
B素材は綿や麻と言った、「固い」素材
・・・となります
ほとんどの服を、家庭で洗濯すると思われる夏場には
特にご注意下さい