第百九十六回:「プロも間違う」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百九十六回は、「プロの間違い」について
以前から、『買う側』と『売る側』で、
認識が大きく異なるのでは、と感じていた事があります
それは、『プロも間違う』と言うことです
特に、自分の利益に直結していたり、
健康に関する問題を抱えている場合
「プロも間違う」と言う事を初めから想定している場合と、
全く想定していない場合では、
その後の行動が大きく変わるでしょう
今年の春、日経平均株価がみるみる上昇し、
4万円の大台に届きそう・・・と言う状況の中で
「今後の株価の推移を、正確に当てられる人はいるのだろうか」
・・・と考え、新聞やテレビで、
いわゆる「専門家の予想」を片端からチェックしてみました
予想としては、
@今の状況はバブル。すぐに急落する
A5万円まで上がる
B今までが低すぎた。10万円まで上がる
・・・と言う予想が多く、その後の
「4万円を超えた後下落して、
38000〜39000円あたりを行ったり来たりする」と言った
今の状況(6月現在)を正確に当てた人は、
知る限りでは一人もいませんでした
そして、予想を外した専門家の人達は、
そんな事など無かったかのように、
今後もテレビや新聞などのメディアに出演します
そう、プロも間違います
ではプロは信用出来ないのか?
と言うと、そうは思いません
では、プロと一般の人の違いは何か、と言うと
「自分の間違いに気付くこと」です
そして、「素早く行動を修正すること」が出来ます
日経平均株価に関して言うなら、
春の時点で「もっと上がる」と予想した人が、
その後の株価の推移を見て、「予想は間違っていた」と判断
その場合、これ以上損を出さないよう対応するでしょう
ただ、最近の株価上昇を見て、
「今すぐ株をやらないと損だ!」と思って取引を始めた場合
この後株価は上がるのか、下がるのか
判断出来ないまま、損失だけが増えて行く・・・
と言う事に繋がるかもしれません
何故このような話をしたかと言うと、
クリーニング業界も同じだからです
「シミ抜きをお願いします」としてお持ちになった衣類を、
シミ抜きしても全く落ちる気配がなく、
良く見たらシミではなく脱色だった・・・と言う事は結構あります
そのような場合、
「脱色であるため、これ以上のシミ抜きはしない」と判断して、
シミではなく脱色である旨をお伝えして、お返ししています
一方、家庭で市販のシミ抜き剤を使用して、シミ抜きする場合、
「これは脱色である」と判断出来ず、
生地を傷めるような、強力なシミ抜き剤を使用してしまったり、
あるいは、柔らかい、繊細な生地の衣類を、
強く叩いたり、擦ったりして、傷付けてしまうかもしれません
日本人は「専門家の言う事なら間違いない」と考える人が多く、
プロの言う事を鵜呑みにする傾向が、
他国と比較しても非常に強いそうです
『売る側』も、プロも間違います
ただ、世の中の事全てを疑うと、疲れます
自分の利益や健康に直結するようなことほど、
プロが自信満々に断言するような事は
「参考にするけど、鵜呑みにはしない」
・・・くらいが、丁度良いと思います