クリーニング豆知識

第百九十四回:「結局はセンス」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百九十四回は、「仕上げの質」について



多くの方が、疑問に感じていると思われること

@クリーニング店によって、
何故仕上げの質が異なるのか


A同じクリーニング店に出したのに、
何故細かい部分の仕上げが異なるのか



ズボンの線の位置、ブレザーのエリ部分の仕上げ方
ワイシャツの、全体的なシワの多い・少ない
オーバー・コートの裏地のシワを取るかどうか、などなど



何故、そのような事になるのかと言うと・・・、
「仕上げを行った人のセンスが違うこと」
・・・が、多くの場合は原因です

そしてココが、クリーニング店側と消費者側に、
大きな認識の溝がある・・・
といつも感じている点でもあります


まず、仕上げと一口に言っても

・作業歴10年以上のベテラン
・仕事を始めて3年程で、ようやく慣れて来た所
・先月入ったばかりの新人


・・・の3人では、全く同じ作業をする訳ではありません


また、ココに

・「一時間〇点」と言うノルマがあり、手間をかけられない
・機械の調子が悪く、一部の機能が使えない
(修理の申請を出しているが、中々応じてもらえない)


・・・と言った個々の事情が加わります
そのため、同じクリーニング店に出したからと言って、
全く同じ仕上げになる訳ではなく、
細かい違いがあると言う訳です


例えば、ズボン

ZARAやGapのズボンの一部には、
「線(タック)付きかどうか」が、
非常に分かりづらいものがあります

元々線がないデザインなのか、
家で何度も水洗いしている内に線が消えて、
線を付けて欲しくてクリーニングに出したのか
ケースバイケースで判断する必要があります



また、線を付ける場合でも、
「線をどこまで付けるか」も、
その人のセンスです

後ろの線は、後ろポケットの下まで付けるのか、
ポケットの中央あたりまで付けるのか
もっと上まで付けるのか



コートやオーバーなど、
主にドライクリーニングによる洗いが一般的な衣類の場合、
洗いの後、
「ボックス」「トンネル」と言われる、
蒸気を当てる機械の中に入れます

そこで蒸気を当てる事により、大抵のシワは取れます・・・が
裏地、特に背中とすそ部分にシワが寄っている場合があり、
そのシワを取るのか、取る作業は行わないのかも、
クリーニング店によって異なります


更に、軽くこすっただけで跡が付くような、柔らかい生地の場合
裏地のシワを取ろうとして、しっかりアイロンを当てると、
表にアイロンの跡が付くため、ハンガーに吊るした状態で、
裏地に蒸気を当てて伸ばす作業が必要になります


作業歴の長いベテランなら、これらの事を知っているでしょう
しかし、先月入ったばかりの新人作業員に、
これら
「特殊な事例」を全て覚えろ、と言うのもムリな話です

そのため、クリーニング店によって
「基本的な仕上げ作業」は異なり

同じクリーニング店であっても、
作業をする人によって
「細かい仕上げ作業」が異なります


クリーニング店は基本的に、作業マニュアルがあります
ただ、服のパターンは無限にあるため、
必ずマニュアルにない事例に出会います
その際。
「今までの経験」が生きて来る、と言う訳です

また、
「知識がある」事と「実際に作業を行う」は別です
一時間に何点、と言うノルマがある場合
「こうした方がもっと良くなるけれど、時間的に出来ない」
と言うケースは多々あるでしょう


では、自分に合うクリーニング店を
どうやって見つけるかと言うと、
結局は
「一通り、近い所に出してみる」しかありません

クリーニング店には相性があります
当社も、周辺にお住まいの方の服、
全てをお受けしたい、と考えている訳ではありません

良く出しているクリーニング店に、明確な不満がある場合
周辺のクリーニング店に出して見るか、
あるいはその不満を、店頭で伝えてみて下さい