クリーニング豆知識

第百九十三回:「『何故そうなる?』な服」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百九十三回は、「何故そうなる?」な服について



クリーニング業に従事して、
日々多くの服に触れていると・・・
「何故そうなる?」と思う服に出会う事があります

そこで今回は、今までに出会った
「何故そうなる?な服」のパターンを紹介します

店頭で同じような服を見た場合、
買ってはいけない・・・とまでは言いませんが、
リスクを承知の上で、購入するよう心掛けてみて下さい



@Tシャツ+ポケットだけウール(毛)

Tシャツに、ポケット部分だけ別生地
・・・と言うデザインのものは良くあります



ただ、このポケット部分に
セーターの素材のようなウール(毛)を使用している場合

一度洗っただけで、ポケット部分から抜けた毛が
Tシャツの部分にびっしりと付く、と言うことがあります

また、洗わなくても、着用時の摩擦により毛が抜けて、
ポケットの周囲に付いている、と言う状態になります



冬場に、ワイシャツやブラウスの上からセーターを着ると、
セーターから抜けた毛が、全体に付く事があります
あの状態と、大体同じです

そして、一度付いたこの毛は
毛取りローラー(いわゆるコロコロ)でいくら取っても、
完全には取れない事が多々あります



毛が生地に
「刺さった」状態になると、
一本一本毛抜きで丁寧に抜いていかない限り、
完璧に取り除く事は困難です

結果として、このようなTシャツは
常に全体に毛が付いた状態であり、
ポケットに使われているウールの色によっては、
非常に目立つ事があります

このようなセーターは、
良く考えてから購入するようにして下さい


また、一部の高級ブランドのTシャツは
「水洗い不可」となっています

水洗い不可と言う事は、表示通りに洗っている限り、
汗や皮脂が落ちないと言う事です
いずれ、蓄積した汗や皮脂が変色して出て来ます


高級ブランドのTシャツは特に、
購入前に品質表示をチェックして
「水洗い可」となっているものを選ぶようにしてみて下さい



A取り外せ・・・ない?

よく、ベルトが付いている服に、
「付属品は取り外してから洗って下さい」と言う
表記のある品質表示が付いている事があります

この場合、ベルトに皮が使われていたり、
金属を含む部品があり、そのような服は
ベルトを取り外して洗えば良いだけです


しかし、毛皮、ワッペンなどが付いた服に、
「付属品は取り外してから洗って下さい」と
品質表示に書かれている事があり

そして、その毛皮やワッペンが
「しっかりと縫い付けられていて、取り外せない」
と言うデザインの服があります



おそらく、原因は
『付属品を取り外せる服』の品質表示と、
同じものを使いまわしているから、だと思われます

では、この場合
付属品を取り外すことなくクリーニングして、
その付属品に劣化・破損が見られた場合・・・


製造・販売したメーカーとしては
付属品は取り外して下さい、と品質表示に書いてある

品質表示にない洗い方をしているため、
ウチの責任ではありませんよ・・・と主張する事が可能です
(必ずそう主張する、と言う訳ではありません)


訴訟にまで発展した場合、
「品質表示の表記に無理がある」
と裁判において判断されるかもしれませんが・・・
そこまで労力をかける人はごく僅かでしょう


本物の毛皮、あるいは大きな装飾品
または、服と全く違う色のワッペン
金属製の部品などが付いている服の場合
必ず品質表示をチェックしてみて下さい

「付属品は取り外して洗って下さい」と言う表記はなく、
「品質表示の『洗い方』のマークに、
全て×がついているため、そもそも洗えない」
・・・と言う服は、世の中にたくさんあります



B縫い目が逆


二枚の生地を縫い合わせたような服で、
左と右で縫い目の向きが逆になっている
ブラウスやシャツ、ズボンに見られます


『逆』とはどういう事かと言うと、
例えば左側は、縫い目の最初と最後の向きが反対
右側は、縫い目の最初と最後の向きが同じ

最初と最後が反対になっていると、
途中で縫い目が「ねじれた」状態になり、
着た際に肌に当たって、違和感があります

また、ズボンでは、裏返した時に
右側の縫い目は縫われて閉じていて
左側は縫っていないため開いている
・・・と言うものが、結構あります



左右で縫い方が違うため、
これは工場での縫製ミスなのか
それともマニュアル通りなのか、といつも思います


夏場に着る服は特に、途中で
「ねじれた」状態の
縫い目は、気になる方も多いと思われるため、
一応チェックするクセをつけてみて下さい



世の中には、このような「なぜこうなる?」と
思うような服が、確かに存在します


購入前に気付く事は難しいものの、不可能ではありません
基本は、やはり
「品質表示を確認すること」です

品質表示に書かれている事で、
疑問に思った事、意味が分からない事があれば
スタッフの方に質問してみて下さい


説明が曖昧で、自分でも違和感を覚えた場合・・・
服に限らず、すぐ購入するのではなく、なるべく時間を置いて
それでも
「どうしても欲しい!」と思ったら買うなど

自分なりのセオリー」を常日頃から意識しておくと
買い物における失敗は、減らす事が出来るかと思います