クリーニング豆知識

第百八十五回:「『水洗い不可』を水洗いする」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百八十五回は、「水洗い」について


「家で洗ったら縮んだ。何とかして欲しい」
・・・と言うご相談を、毎年夏の時期に多くお受けします

ただ、クリーニング店にわざわざ持ち込む方は、非常に少ないと思います
また、
「水洗い不可の表示の衣類を家で洗って、大丈夫なので気付かない」
・・・と言う事も、多々あります

では、『水洗い不可』の衣類を水洗いすると、
実際にはどのくらいの割合で縮んだり、
シワが寄ったりするのか



今まで、
「汗をかいたので、水洗いして欲しい」と言うご相談を受け、
お客様のご了承を得た上で、
水洗い不可の衣類を水洗いした事は、たくさんあります
その経験から言える事は・・・

「意外と大丈夫。でも、一発アウトな衣類もたくさんある」

・・・と言う事です

どんな素材が大丈夫なのか
どんな素材はアウトなのか


装飾品や形状によって異なるため、一概には言えませんが、
傾向としては以下の様になります


@ポリエステル100%の衣類

細かいシワが寄るものの、大抵の場合は大丈夫です


ただし、裏地付きの衣類は、裏地と表地の両方にシワが寄ると、
着心地が大きく変わる事もあります


一部の高級ブランドに見られるような、
「水洗い不可」の表示が付いている、
Tシャツやワイシャツ、ブラウスなどは、素材がポリエステル100%であれば、
大丈夫な事が多いものの、品質表示にない洗い方である事は確かなので、
とてもとても大事にしている場合は、水洗いしない方が無難です


A綿・麻100%の衣類

大丈夫な場合と、全体にシワが寄る場合が極端です


前述のポリエステル100%と同様
とても大事にしている衣類の場合

綿・麻素材の水洗い不可の品質表示が付いているなら、
基本的に水洗いは避けた方が無難です


ただ、大丈夫な場合も非常に多く見られるため
縮みやシワ、色落ちを気にしない場合には、
リスクを承知で水洗いする、もアリだと思います


また、綿・ポリエステルが両方含まれている衣類の場合、
ポリエステルが100%近く含まれている場合、
ポリエステル100%の衣類と大体同じと考えて大丈夫です
綿の割合が非常に高い場合、同様に注意した方が良いでしょう


Bシルク・アセテート・ポリウレタンなどを含む衣類

基本的に、水洗いは避けた方が無難です


お客様の了承を得た上で、シルクを含む衣類を水洗いして、
大丈夫だった事はあります・・・が、リスクは高いです

ポリエステルやアセテート、ポリウレタンは人工の繊維ですが、
全体的に、水洗いをすると危ない素材が多く見受けられます

そのため、
「ポリエステル以外の、名前がカタカナの素材は要注意」
・・・と考えると、覚えやすいかと思います



全体にシワが寄っても、クリーニング店の設備を用いれば、
元通りになる場合もあります・・・が、家庭で再現する事は難しいため、
「迷ったら、とりあえずやめておく」が無難です

衣類は、着ている間に汗をたくさんかいたり、
食べ物のシミが付いてしまった場合、
水洗いをしないと、脱色・変色のリスクがあります

しかし、『水洗い不可』の衣類を水洗いする事は、
常に縮みやシワが寄るリスクがあります

縮みやシワと、脱色・変色
自分にとって、どちらのリスクの方が「軽い」のか
一度、考えてみて下さい