クリーニング豆知識

第百七十九回:「ポケットとインク」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百七十九回は、「ペン先とポケット」について


以前
から感じていた事ですが
ポケット内に点々とインクのシミが付いた
ワイシャツが非常に多く見受けられます


つまり、ペン先を仕舞わないまま、
ボールペンをポケットに入れておく男性が、
世の中には非常に多い・・・と言う事です



付いているのはインクであるため、油性やゲルインクの場合は特に、
クリーニングしてもほぼ落ちない、と言う事が多々あります

また、夏場は特に、汗をかくことでインクがしみ出して、
中に着ているシャツや、上に着ているブレザーに
インクが付いているケースが多く見受けられます



市販のシミヌキ剤などで、自分でシミヌキをしようとして、
少しシミヌキをしただけで広がってしまい
「点」状のシミが「面」状になってしまった、
と言うご相談をお受けした事もたくさんあります

また、家でポケット内にインクが付いている事に気付かないまま、
他の衣類と一緒に洗ってしまい、インクが移ってしまった・・・
と言うご相談も、今までたくさんお受けして来ました


人間の意識や習慣と言うものは、よほどの事がない限り変わりません
そのため、家族が
「ペン先を出したまま、ポケットにボールペンを入れないで」
と何十回と指摘した所で、そう簡単に癖が治る・・・と言う事はないと思います

また、
「消しゴムのカス」「噛んだ後のガム」も非常に厄介なモノであり
ポケット内に入れたまま、クリーニング店で洗い・プレスをすると

消しゴムのカス、噛んだ後のガム共に、溶けた状態でポケット内にへばりつき
取り除く事が非常に難しくなる場合があります

特にガムは、基本的に着色料が入っている事もあり、
取り除くことが難しい上に、非常に目立ちます



ボールペンのペン先を仕舞わないまま、ポケットに入れる・・・
消しゴムのカスを、取り合えず後で捨てようと思ってポケットに入れる・・・
飴やガムの包み紙を、取り合えずポケットに入れる・・・

これらは大抵、無意識の内にやっている癖です
自分の中で、
「これをやると、後でとても困った事になる」
・・・と言う認識が生まれない限り、簡単には変わりません


ご自身で思い当たるクセがある場合、
ボールペンを使う・消しゴムを使う・ガムを噛むたびに

「そのままにしておくと、どうなるか」を考えて、
「ストップするクセ」を付けるよう、努力してみて下さい


ご家族でそういったクセがある方がいる場合
何度指摘しても、そう簡単には治らないため

ポケット内のインクのシミ、消しゴムのカス、噛んだ後のガムなど
「そのままにしておくと、困った事になりかねないもの」を見つけた時点で、
「入れた状態を見せながら」すぐさま本人に指摘する・・・と言う事を、
根気よく、何度も繰り返すやり方が、時間はかかるかもしれませんが効果的です

特にインクのシミは、一緒に洗った家族の服、
その全てにインクのシミを付けてしまう恐れがあり、とても危険です
ご注意下さい