クリーニング豆知識

第百七十五回:「正しい線とは」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百七十五回は、「認識の違い」について


件数としてそこまで多くありませんが、
よそのクリーニング店に出したら、
ズボンにおかしな線を付けられた。直して欲しい
・・・と言うご相談をお受けすることがあります

そして、そのたびに思うのが
クリーニング店側とお客様側の「認識の違い」です


どういう事かと言うと、
お客様の側からすると
「おかしな線」ですが

クリーニング店側からすると
「マニュアル通りの正しい線」と言う事になります


お客様の中に
「このズボンには、この線が正しい」と言うイメージがあり、
イメージ通りの線が付いて帰って来る、と思うのが普通でしょう

ただ、クリーニング店側からすると
「マニュアルにある通りの線」が正しい線であり

例え、店頭で
「こういう感じで線を付けて欲しい」
とハッキリ伝えた所で、大抵はマニュアル通りの線が付いて来ます


しかし、実際に現場で作業している人からすると、
マニュアル(あるいは指示書のようなもの)の通りに
作業を行のが
「正しい」と教えられているため

特にパート・アルバイトの人の場合は、自分の判断で、
勝手にマニュアル外の事をして良いのかどうか、判断に迷うことでしょう


たたみかハンガーか、に関しても
狭いスペースでの営業を前提としており、
基本的に全てハンガー仕上げ、と言うお店もあります

そう言ったお店で
「吊るすと伸びるので、これはたたんで下さい」
と要望を伝えたとしても、そのお店にそもそも
「たたむ」と言う仕組みがない場合、対応が出来ません


この、消費者側からすると
「要望を伝えれば、自分のイメージ通りにやってくれる」

クリーニング店側の
「機械の種類やスペースの都合上、出来ない事もある」
と言う認識の違いは、今後も永遠に埋まる事はないと思います


チェーン店では特に、受付を担当している方は
「受付以外をやった事がない人」であり

要望を伝えられても、実際に現場でそれが出来るのかどうか
判断が付かない場合が多いでしょう


そのため、店頭で要望を伝え、
(受付の人からすると、確証はなく)
「出来ますよ」と言われても

実際には自分のイメージと全く違う状態で
クリーニングに出した服が戻って来る事はあります


ただ、要望を伝えてもムダ、と言いたい訳ではなく
すごく大事にしていて、取扱いにはとても注意して欲しい服がある場合
店頭で要望を伝える事は大事です

仕上がり日やシミ抜きに関しても、
必要な日に間に合うのか、このシミは取れるのか
確認する事は必要です



ただ、
「自分の中の『こうして欲しい』と言うイメージ」
「実際に作業する人のイメージ」は、多くの場合、一致しません

要望を伝える事と、その通りにやってくれる事は別
・・・と言うことを、忘れないで下さい