第百七十四回:「二つの表示」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百七十四回は、「海外製の服に関する裏ワザ」について
以前から何度か触れていますが、世の中には
海外と国内の、二つの品質表示が付いていて
何故か二つに書かれている洗い方が違う
・・・と言う衣類が結構あります
何故このような表示を付けたのか、本当の理由は分かりません
メーカーによっても判断が違うとは思います
ただ、基本的にこのような表示の場合
海外製の表示:水洗い可
国内製の表示:水洗い不可
となっているため
「日本人は神経質だから、
少しの色落ちや縮みでも、クレームになるかもしれない
だったら、水洗い不可の表示を付けておこう」
・・・と考えたのではないかな、などと思ってしまいます
高級ブランドの一部にも、このような表示は見られますが、
夏場に着るシャツやブラウスを水洗い不可にすると
家では洗えない、クリーニングに出しても汗は落ちない
結果として、汗による変色・脱色が発生する・・・と言うケースを、
少なくない数見て来ました
この状況は、ずっとおかしいと感じてきました
2016年に品質表示の規格、「JIS表示」が一新され、
国内独自の表示ではなく、海外の表示と統一されました
また、それまでメーカー側の都合で付けられていた表示を、
服の特性に合わせた表示を付けるよう、変更されました
・・・にもかかわらず、海外と国内で違う表示の服をまだ見かけます
法律の改正前に作られた服の場合もありますが、
未だに「この表示は何で?」と思う服は、世の中にたくさんあります
ただ、この状況を逆手に取った「裏ワザ」も考えられます
何かと言うと、海外の表示で水洗い可
国内の表示で水洗い不可となっている場合
基本的には「水洗いをしても、着れなくなることはない」
・・・と言う服であると思われます
水洗いをすると、大幅に縮んで着られなくなるような服には、
海外の表示であっても、水洗い不可の表示がちゃんと付いています
そのため、「自己責任で、家庭での水洗いをしてみる」
と言った事を、考えてみても良いのでは、と思います
素材が綿やポリエステル100%の場合は、割と大丈夫です
ただ、ワッペンやビーズなど、特殊な付属品が付いている場合、
避けておいた方が無難な事もあります
シルクやアセテート、人工皮革が使われている場合は、
やめておいた方が良いでしょう
クリーニング店は、基本的に表示にない洗い方は行いません
「縮みや色落ちが発生しても構わないので、水洗いをして欲しい」と
店頭でお願いしても、やってくれるクリーニング店は、
特にチェーン店では中々難しいかもしれません
ただ、着ていて汗をたくさんかいた場合
水洗いをしないと、基本的にその汗は除去出来ません
いずれ、変色や脱色を引き起こします
そのため、水洗いをしないといずれダメになってしまう場合は
国内の表示が「水洗い:不可」となっていても、
自己責任で思い切って水洗いをしてみても、良いかもしれません
汗による、変色・脱色のリスクと
水洗いをしたことによる、縮みや色落ちのリスク
両方を天秤にかけた上で、行うようにしてみて下さい
もう販売しておらず、ものすごく大事にしているような服の場合は、
避けた方が無難です