クリーニング豆知識

第百七十三回:「中性洗剤の使い方」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百七十三回は、「中性洗剤の使い方」について



前回、
「ドライマークの衣類は、
中性洗剤で洗えません」
と言う話をしました

ただ、それだけだと、良い製品だと言っておきながら、
「どう使えば良いのか」を説明していないため、
中性洗剤の基本的な使い方について、
書いておきたいと思います




@シミ抜き剤として使う


ドラッグストアで、ワイシャツのエリ・ソデに塗って使う、
前処理剤のような洗剤が売っていますが、
中性洗剤も
「洗う前に付ける洗剤」として使うことが出来ます

ワイシャツのエリ・ソデ用前処理洗剤も、
「エリ・ソデ用」と言ってはいますが、
実際には皮脂汚れを落とす効果があるため、
油を含む食べこぼしのシミ全般に効きます


メリットとしては、やはり中性なので、
付けた後に時間が経過しても、
脱色・変色のリスクが比較的低いこと

これがアルカリ性や酸性の洗剤の場合、
衣類に悪い影響を及ぼすことがあります



ただし、そもそも水洗い出来ない衣類に付けると、
逆にシミになります

食べこぼしのシミに、慌てて洗剤を付けて、
かえって広がってしまった・・・と言うご相談を、
今まで数えきれない程お受けしてきました


前処理のシミヌキ剤として使用する場合は、
水洗い可能な衣類にのみ付けるよう、注意して下さい

エリ・ソデのシミヌキ剤として使用する場合、
付けた後、使わなくなったハブラシなどで
こすってあげるとより汚れが落ちます


シミにもよりますが、洗剤でゆるませて、
物理的にこすって落とすと、上手く落ちることがあります

ただ、柔らかい素材の場合は特に、
強くこすらないようにして下さい


A漬け込み洗い

汗や、広範囲に付いたシミを落とす際に有効な方法です
バケツやおけに水を入れ、
中性洗剤を加えて、衣類を漬け込みます


こちらも、必ず水洗い可能な衣類で行うようにして下さい
ドライクリーニングのみ、特に裏地のある衣類の場合、
水に入れた時点で裏地が大幅に収縮して、元に戻らなくなります


漬け込む時間は、汚れの落ちた状態を確かめながら
基本的に、一時間漬け込んで落ちない場合、
それ以上漬け込んでも、あまり効果は期待出来ません


その後、水を捨て、またバケツに水を入れて衣類を漬ける
・・・を2〜3回繰り返し、
洗剤の成分をしっかり落としてから、洗濯機で脱水します

ポロシャツやワイシャツと言った、比較的丈夫な衣類の場合、
手で絞ってそのまま干しても、問題ありません


B短時間漬け込み&ごく軽く脱水

最後は裏ワザ的な使用法です
リスクが高いので、
自己責任で行うようにして下さい


ドライクリーニングのみの衣類・・・と一口に言っても、
実際には様々な種類があり、
その中には
「水洗いしても問題ない衣類」もあります

装飾や付属品、大きなフリルなどが付いている衣類など、
「素材としては水洗い出来るけれど、元の状態に戻すのは難しい」
のようなものもたくさんあります


広範囲のシミが付いた、たくさん汗をかいた、と言った理由で、
「着れなくなっても良いので、水洗いして欲しい」と言われて、
ドライクリーニングのみの衣類を水洗いすることは、
夏場は特に多いのですが

基本的に、ポリエステル100%の衣類は、割と大丈夫です
水洗いすると、かなりシワが寄る場合があるものの、
綿と麻も、比較的大丈夫な場合が多く見受けられます

そのような衣類に、シミや汗が付いてしまった場合
「短時間漬け込んで、短時間脱水する」と言うやり方があります


やり方はAと同じで、漬け込み・脱水の時間を短くするだけです
目安として、漬け込みは5〜10分程度。脱水は1〜2分程度。
脱水せず、そのままハンガーにかけて、濡れ干しした方が安全です


ただし、元に戻らないほどシワが寄ったり、
縫い目が大幅に縮んで、着られなくなるリスクがあります
特に、素材がウールやシルク、ポリウレタン、アセテートなどの場合、
避けた方が無難でしょう


中性洗剤は、衣類への刺激が少ないと言う特性から、
シミヌキ剤からデリケートな衣類の洗いまで、
広範囲に使える便利な洗剤です

今まで全く使って来なかったと言う場合、
日々の洗濯に上手に取り入れてみて下さい