クリーニング豆知識

第百七十回:「縮んだセーターの回復」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百七十回は、「縮んだセーター」について



シミが付いてしまったので、
家で洗ったらセーターが縮んだ!


・・・と言う経験は、大抵の方があるのではないでしょうか
そして、そう言った縮んだセーターを店頭にお持ちになり

「元通りに出来ませんか?」と言う
ご相談をお受けすることがあります

Googleで
「ニット ちぢみ」と検索すると、
「縮んだニットを元通りにする方法」がたくさんヒットします

そう言った情報を元に、お客様にリスクを説明した上で、
「ダメなら諦めるので、お任せします」とご了解を得て、
色々と試してみて上手く言ったやり方が・・・



@スチームアイロンで伸ばす
Aリンス液を含ませる
・・・と言う、二つの方法です


ただし、全ての縮んだセーターが元に戻る、
と言う訳ではありません
また、あくまで
「縮んだ状態を、元に戻す」であって

シルクのセーターやブラウスを水洗いすると見られる、
「全体がシワだらけになった状態を、元に戻す」
ではない点にご注意下さい


そもそも、なぜセーターを水洗いすると縮むのか?と言うと、
実際には繊維そのものが縮んでいるのではなく

水洗いをしたことによって
「毛が絡まり合って、縮んだように見える」
状態になっているだけです

そのため、この
「絡まり合った状態」を解消することで、
縮んだニット類を元に戻すことが出来る可能性があります



実際のやり方ですが

@のスチームアイロンを使用する場合、
「スチームをあてて、引っ張って、アイロンで固定」
が基本的なやり方です

ただし、黒や紺と言った濃色の衣類は、
アイロンをしっかりあてると白っぽくなる事があります

そのため、
「浮かせアイロン」と呼ばれる、
「アイロンで軽く撫でる」ようなアイロンのかけ方か
もしくは
「スチームをあてて、ひっぱるだけ」の方が無難です



Aのリンス液を漬け込むの場合、
以下のような手順となります


1:セーターが浸るくらいの水を洗面器に入れ、
リンスを1プッシュ分加える

2:全体にリンス液が含まれたらすぐ取り出す
「漬け込む」ではなく、「全体に含ませる」点にご注意下さい

3:軽く絞る。
強く絞るとシワになるため注意
薄い・弱い生地の場合、
軽く絞るだけでもシワになることがあるため、
絞らない方が良い場合もあります
その場合、下にタオルを敷いて干すなどしてみて下さい

4:手で少しずつ引っ張って元の大きさに戻し、平干しで乾燥させる
強く引っ張ると伸びてしまうため、少しずつ、弱く、引っ張る



この工程を行っても元通りにならない場合は、
厳しいと思われます

なお、綿や麻には、リンスを柔軟剤に変えて、
同じように「柔軟剤液を含ませて、絞って、平干し」で、
縮んだ状態を元に戻すことが出来る場合があります


ただ、一番大事なことは
『縮ませないこと』です
シミが付いた、汗をかいた。だから洗う・・・の前に、
洗濯表示を確認するクセを、付けるようにしてみて下さい、