第百六十六回:「シミとは付いてしまうもの?」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百六十六回は、「シミに対する認識の違い」について
長年クリーニングに従事していて、つくづく思うのは
シミに対する、人の認識を変えることは簡単ではない
・・・と言う事です
人の「シミに対する人の認識」は、
大きく分けて以下の3つのパターンに分かれると考えています
@シミを服に付けないよう、
細心の注意を払っていて、実際にシミを付けない
Aシミを服に付けないよう注意を払っているが、
食事中はどうしても他の事に注意が向いてしまい、
気が付くと服にシミが付いている
B「シミは付いてしまうものだから、
気を付けても仕方がない」と、最初から諦めている
@は女性に多く、Aは男性も女性も、Bは男性に比較的多く見られます
そして、お伝えしたいのはこの
「パターン分け」についてではありません
それは、
「@〜Bの間の溝をムリに埋めようとすると、大抵の場合ケンカになる」
と言う事です
そして、これらの認識は、
年齢が上がるほどに固定化され、変化することは難しくなります
そのため、この認識をムリに変えようとしても徒労に終わります
中でも非常に多く見受けられるのが、
「奥さんが@・ご主人がB」と言うパターンです
ご主人が頻繁に服にシミを付け、
奥さんに「クリーニングに出しておいて」と言います
奥さんからすると負担になりますが、
ご主人としては「奥さんにお願いしているだけ」なので
自分は困る事はなく、
シミを付けてしまって反省する・・・と言う事はありません
そう言った事が積もり積もって、
奥さんが「シミ付けないよう、気を付けてよ!」と怒ります
しかしご主人としては
「クリーニングに出せば落ちるのに、何を怒ってるの?」となります
上記のBの認識の方は特に、
『考えを改める』と言う事は中々ありません
では、@の認識の人は、
Bの認識の人が家族にいる場合、今後もガマンするしかない・・・
かと言うと、そうでもありません
今まで、Bの認識の方が考えを改める、
あるいは少しでも考えが変わる・・・
と言うケースを、何度も見てきました
変わるきっかけはいくつかありますが、やはり一番大きいのは
「代えのきかないお気に入りの、もしくは大事な服に、
取れないシミが付いてしまった」と言うケースです
〇シミが付いても、
どうせクリーニングに出せば落ちるだろう・・・と一ヵ月放っておいた
〇梅雨の時期、
部屋にかけっぱなしにしておいて、全体にカビが生えて脱色した
〇少しぐらい大丈夫だろうと思って、
雨の中濡れて帰ったら、全体に水玉模様のシミが・・・・・など
人間、「このままではダメだ」と自分で気付かない限り、
中々変わらないものです
それを、「シミを付けないよう気を付けてよ!」と
周囲が変えようとすると、反射的に反発します
家族がシミに無頓着で困っている・・・と言う場合、
ムリに変えようとすると摩擦を産みます
それよりも、「服に厄介なシミが付くって、すごく困るんだ」
と自分で気付くまで、待つ方が無難です
そんなに待ってられないよ、と言う場合
「シミが付くと、
お気に入りの服がダメになって、あなたが困るよ」
と言ってみると・・・
もしかしたら、上手く行くかもしれません