クリーニング豆知識

第百六十二回:「価格のマジック」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百六十二回は、「価格の見せ方」について



お店のポスターや、ホームページ上の価格表において

〇〇:600円 ⇒ 400円

とだけ書いてあった場合
@今だけの価格なのか、期間限定だとしたら、いつまでなのか
A600円と言う価格で販売した事は、今まであるのか

・・・と言う事を、つい考えてしまいます

新聞によく、

「当社商品の価格に関するお詫びとお知らせ」
・・・のような謝罪文が掲載されています

同じ「売る側」として興味があり、
チェックするようにしていますが

「こんな売り方を、長年続けていたのか」
思うような表示や説明文が、非常に多く見受けられます


実際に消費者庁から、
景品表示法違反で是正命令が出た例として、上記のような
「『600円 ⇒ 400円』 とだけ書かれた価格」があります

これはどういう事かと言うと、
「一度も600円で販売した事がないのに、
600円と言う価格を表記する」
やり方です


販売開始当初から400円と言う価格であるにも関わらず、
店頭、もしくはホームページ上の価格を
「600円 ⇒ 400円」と表記して

あたかも割引している価格であるかのように見せた
と言う方法になります


また、
「〇〇%OFFキャンペーン実施中!
 今月末までの期間限定」
と表記しておきながら

実際には長期間に渡ってキャンペーンを実施していた、
と言うケースもありました


是正勧告を受けた会社の言い分は、
「毎月、キャンペーンを継続するかどうか
検討していたが、好評なので続けていた」


・・・と言うものですが、
「今月末まで」と言う表記を
信じて利用した消費者にとっては、
騙していると受け止められても仕方のない表記でしょう


そして、行政から是正勧告を受けたり、
SNSで炎上したりするのは、
このような表記をしている会社のほんの一部です

大部分は、
「これまでもずっと、このやり方でやって来たから」のような理由で、
消費者に誤解を与えるような価格の表記を続けています

「売る側」の一人として言える事は、
「価格と商品やサービスの内容に、
納得出来るならお金を使う

表記や説明文を気にしすぎない」と言う事です


代表的なのは
保険の約款で、
全て読んで理解する人は少ないでしょう

しかし、多くの人が見るのはそこではなく、
保障の内容や保険金の支払いに関してであり

その部分に納得して契約するのであれば、
その保険は
「私に取っては良いサービス」になります

「売る側」の目で見ても、
誤解を招く表記や説明を全て見抜くのは困難です

ならば、その部分を気にするのではなく、

「内容に納得出来るかどうか」
を見た方が良いと感じます


今の時代、おかしな表記・説明はあっと言う間に
「炎上」するため、
「売る側」も非常に気を付けるようにはなりました

ただ、そのような時代の流れに鈍感な企業ほど、
「おかしな表記」を続けています

全てを疑いの目で見ると疲れてしまうので、
まずは
「価格と内容に納得出来るかかどうか」と言う目で、
商品やサービスを見る事をオススメします