クリーニング豆知識

第百四十五回:「ドライか水か」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百四十五回は、「ドライクリーニングと水洗いの境目」について


クリーニング店は、
お預かりした衣類を洗う際、品質表示を見て、
その表示に明記されている洗い方に従います


ドライクリーニングのみ、あるいは水洗いのみの衣類は、
基本的に
「品質表示通りに洗っている」
と考えて間違いありません


では、
「ドライクリーニング・水洗いの両方が可能な衣類」
を洗う時はどうでしょうか

実は、業界全体として、
統一されたガイドラインのようなものがある訳ではありません

そのため、同じ
「ドライ・水の両方が可能な衣類」
を別々のクリーニング店に出したとして、
それぞれ洗い方が異なる可能性はあります


この違いがどのような結果を生むかと言うと、
ドライクリーニングでは汗や食べ物のシミが落ちづらいので、蓄積します

一方で水洗いは、汗や食べ物のシミを良く落とす一方で、
繰り返しの水洗いを行う事により、
縮みの発生するリスクがあります


そのため、A店に出すと
汗が落ちなくて、何だかゴワゴワしている


そう思ってB店に出すと、
汚れは落ちる一方で、
少しずつ縮んでいるような気がする・・・

と言う事もあり得ます



また、ドライクリーニングは比較的衣類に優しい洗い方なので、
洗いあがった後に、あまりシワが寄りません

そのため、
「仕上げをする側」から洗い方を見ると、
「出来ればドライクリーニングで洗いたい」と考えます

特に低価格を売りとしているチェーン店の場合、
現実的なコストで仕上げを行う場合

洗いあがった後、仕上げの機械に通すだけで
シワがある程度伸びる、

ドライクリーニングでの洗い方を優先しなければ、
コストに見合わない・・・と言う問題もあります


A店に出して、
「汗を落として欲しい」と言った所、
汗が落ちてスッキリした状態で戻ってきたからと言って、
同じ衣類をB店に出して、同じ事を言った所で、
同じような状態で戻ってくると言う保証はありません

当社でも、時折
「大事な服なので、ドライクリーニングで洗って欲しい」
あるいは
「汗をかいたので、水洗いして欲しい」・・・と言われる事がありますが、
ご希望の洗い方に対応していない場合、お応えする事は出来かねます


以上の事から、

@ドライ・水の両方の洗い方が可能な衣類は、
クリーニング店によって洗い方が異なる場合がある

A洗い方についての要望を伝える事と、
実際にその洗い方で洗ってくれるかどうか、は別である

・・・と言う事を、頭の片隅に置いておいて下さい