第百四十四回:「『売る側』から見たキャッシュレス」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百四十四回は、何かと話題の「キャッシュレス決済」について
キャッシュレス決済が盛り上がっています
政府が、消費税増税後の景気の冷え込みを防ぐため、
中小企業でキャッシュレス決済を行うと、
一定のポイントが戻って来る仕組みを導入しました
(2020年6月まで)
日本は、中小企業の割合が非常に多い国であるため、
企業側が申請を行い、登録されれば、
多くのお店でポイント還元を受ける事が出来ます
この、『キャッシュレス決済へのポイント還元』
増税後のデータによると、
申請・登録を行った企業は、全体の約半分程度との事です
『買う側』からすると、
「便利なのに、何故やらないの?」と感じると思います
クリーニング業界においても、キャッシュレス決済は広がりつつあります
しかし、『売る側』から見ると、キャッシュレス決済と言うものは、
「自動的に売り上げが減る、恐怖のシステム」
・・・と見ることも出来ます
まず、キャッシュレス決済の端末は無料ではありません
「最初の〇ヵ月間は無料」や、
「政府によるポイント還元終了まで無料」と言う企業もあります
現在は無料と言う触れ込みであっても、
突然「来月から有料です」と変わるかもしれません
この端末使用料が、「固定費」となります
そして何より、キャッシュレス決済には「手数料」が発生します
クレジットカードでの決済や、スマホのアプリでの決済など、
決済の種類によって手数料は異なりますが、数%程度が相場です
つまり、『キャッシュレス決済の分の代金×手数料』が、
自動的に売り上げから引かれる訳です
キャッシュレス決済導入により、
減少分を上回る程の売上アップに繋がれば良いのですが・・・
実際には、キャッシュレス決済を導入した瞬間、
売上アップをするとは考えられません
現在の売上の何割かが、
そのままキャッシュレス決済に移行するだけです
・・・と言う事は、キャッシュレス決済を導入したが最後
全体の数%程度であっても、
永遠に売上から手数料が引かれる事になります
そして、一度キャッシュレス決済を導入すると、
途中でやめる事は中々難しいでしょう
キャッシュレス決済の導入で売り上げ・客数アップに繋がらなくとも、
「キャッシュレス決済が使えるから、そのお店を利用している人」は
必ず一定の割合が存在するため、
それらのお客様を失うリスクを考えると、
そう簡単にキャッシュレス決済から撤退する訳にはいきません
政府によるポイント還元の終了まで、
手数料の割引や無料と言う企業があったとしても、
ポイント還元終了後は、通常通りの手数料を徴収されます
以上の事から、キャッシュレス決済と言う仕組みを、
特に中小企業の『売る側』から見ると、
@永遠に手数料分が売上から差し引かれる
A一度始めると、簡単には撤退出来ない
・・・と言う、恐怖の仕組みと捉える事も出来ます
世の中が、キャッシュレス決済の広がる方向へと進んでおり、
多くのお客様が、クリーニング業界においても、
キャッシュレス決済を必要としている事は、日々感じます
しかし、上記@およびAが解消されない限り、
今後キャッシュレス決済は
「ある程度広まって、その後頭打ち」になるのでは、と見ています