クリーニング豆知識

第百四十三回:「縮みとシワ」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百四十三回は、「縮みとシワの関係」について



クリーニングに出して、
返ってきた服に大きなシワが寄っていた場合


消費者側は、
「クリーニング店側の見逃し」
あるいは
「手間をかけていない」と感じます


しかし、クリーニング店側から「シワ」と言うものを見た場合、
繰り返しの洗濯により、縮んでいる事が原因によるシワ
・・・と言う視点もあります

そして、この
「縮みが原因のシワ」

服の素材や縮みの原因にもよりますが、
何回やり直しても伸びない場合が多々あります



代表的なものが、

ワイシャツのエリ・カフスの縮みによるシワ
です

ワイシャツのエリ・カフスは、縮みが顕著に顕れる部分であり、
そのままプレス機でプレスすると、かなりシワが寄ります


また、
ボタンをはめる部分(前たて)も、
縮んだ状態でプレスすると、
斜め方向にギザギザのシワが寄ります

当社では、この部分を伸ばすプレス機を使用していますが、
購入してから何年も経過したワイシャツが、
新品同様にシワなく伸びるかと言われると・・・やはり限界があります

エリ・カフス部分に関しても、
洗うと丸くなってしまう程縮んでいる場合
この部分をシワなく完璧に伸ばすのは、ほぼ不可能です


そのため、クリーニングにワイシャツを出して、
「エリ・カフス・前たて」のいずれか、
あるいは複数箇所にシワが寄っている場合

「このワイシャツは、縮んでいますよ」と言うサインです

ワイシャツの業務用クリーニングは、多くのクリーニング店で、
汚れ落ちの点から温水で洗っています
(水温は、クリーニング店によって異なります)


基本的に、温度を上げるほど、
洗剤の洗浄効果は高くなる傾向にあるため

「キレイに洗ってお返しする」と言う、
クリーニング業に求められる役割を考えると、
今後もこの方針は変わらないと思われます


しかし、温水で洗うと言う事は、汚れ落ちがよくなる代わりに
縮みと言う点では、衣類へのダメージが大きくなる場合もあります
(全ての衣類に対して、温水洗いの方がダメージが大きくなる・・・
と言う事ではありません)


ワイシャツ以外にも、

ニット製品のわき・すそ部分、ズボンのひざの前後部分


ブレザーのそで・背中部分などは、
頻繁に負荷がかかるため、伸び・縮みの発生しやすい部分です


クリーニングに出した、
あるいは家庭で洗った衣類に、大きなシワが寄っている場合

それはもしかしたら、縮みが原因であり、何十回アイロンをかけても、
もはや元には戻らないシワかもしれません


その場合、シワを気にせずまだ着るのか
寿命であると考えて処分するのか

「この部分のシワなら、まだ大丈夫。
ただ、この部分のシワが伸びなくなったら、新しいのを買う」


・・・と言う、自分なりの基準を作って備えておくと、
いざと言う時に慌てずに済むでしょう