クリーニング豆知識

第百四十一回:「耐用年数」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百四十一回は、「耐用年数」について


クリーニング業者・アパレル業者には知られているものの、
一般にはほとんど浸透していない言葉
そのようなものの一つに、「耐用年数」があります


ほとんどの人にとっては、
一生関わり合いになる事のない言葉ですが

クリーニング業者やアパレル業者と、
何らかのトラブルが発生した場合、
業者側はこの言葉を、突然持ち出して来る場合があります

正確には、統一した
「耐用年数」と言う言葉を、
クリーニング・アパレルが共通して使用する訳ではなく

「物品の再取得価格」「減価償却」
単純に
「寿命」など、業種・業態によって表現は異なります
(クリーニング・アパレル業以外でも、使用される場合は多々あります)


どのような状況で、この言葉を使用するかと言うと、
クリーニングに出して、破れ・こすれ・傷などが発生した場合
あるいは、クリーニングに一度も出していなくとも、
そのような状態が発生した場合
「この製品は耐用年数を超えています」・・・と言ったように使われます


例えば、クリーニングに最も出るワイシャツで言えば、

耐用年数は2年です


婦人物のブラウスや、
紳士・婦人問わずセーターやジーンズ、スラックスも
同じく2年となります

これは、法律で定められた数値であり、
クリーニング・アパレル業者が好き勝手に設定した訳ではありません

詳しくは、グーグルで
「衣類耐用年数」で検索すると、
早見表を掲載したホームページが出てきます


夏物スーツやブレザー・コートは
3年
冬物スーツは
4年とされています

つまり、クリーニングに出して破れ等が発生した場合
クリーニング業者としては、この耐用年数を持ち出して、
「寿命です」と言えるわけです

また、一度でも何らかの修理・補修をされている場合も、
購入からの年数に関係なく、
「劣化している」と言えます


また、「耐用年数」と同様、
ほとんど一般には知られていない事の一つに
「クリーニング事故賠償基準」と言うものがあります

これは、クリーニング業者と消費者の間に、
何らかのトラブルが発生した際、
賠償の基準を定めた業界の自主基準です


その基準によると、
基本的には購入から24ヵ月以上経過すると、

元の価値を100とすると、最も良い状態(新品同然)で、
21
常識的に使用されている場合で、

明らかな劣化が見られる場合で、


・・・とされています


この基準は比較的公平・中立な基準とされていますが、
全てのクリーニング業者に適用されると言う事ではなく、
「当社の基準は違います」と言う対応は、法律違反ではありません


以前は、消費者センターの相談件数で
常にトップであったクリーニング業ですが

業界自体が「このままではいけない」と考え、
このような基準を作り、技術の向上などもあり、
現在では相談件数は減少傾向にあります

しかし、クリーニング業と消費者間のトラブルが、
無くなったわけではありません


クリーニング・アパレル業とのトラブルから、
自分や家族を守る、と言う意味でも

購入から2年以上が経過した場合、
基本的にその衣類の価値は、0に近いとみなされる

・・・と言う事を、頭の片隅に置いておくようにして下さい