クリーニング豆知識

第百三十九回:「イタリア製の魔力」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百三十九回は、「イタリア製の衣類」について


多くの方が、街で目にする事はあっても着ることはない
しかし、熱心なファンが確実に存在する
それが、イタリア製の衣類です


ユニクロやZARA、Gapなどと比較した場合、
大抵は配色や縫製が違います

赤と青、黄色と黒など、
ファストファッションにはあまりない(=人を選ぶ)色合いの衣類があり
「魅力」と言うより「魔力」に近い、といつも思います


サイズに関しても、ゆったりした万人向けのサイズではなく、
「やせている人でも、かなりキツいのでは」と思えるような、
しっかり体にフィットするようなデザインのものが多くあります

当社のお客様の中にも、持っている服は全てイタリア製なのか、
当社にお持ちになる服はイタリア製なのか・・・は分かりませんが、
イタリア製の服ばかりをお持ちになるお客様が多くいます


大量生産の既製品は着たくない
私だけの一着が欲しい、と言う場合には、
選択肢の一つにはなり得ると思いますが・・・
イタリア製の服には、一つ罠があります

それは、
水洗いが出来ない服が非常に多い、と言う事です


このコラムや、
「クリーニング日記」でも繰り返しお伝えしていますが、
水洗い出来ない衣類の何が問題かと言うと

汗が付着すると、色落ちや縮みのリスクなしに、
『汗だけ』を除去することが難しいからです


この事実は、
今後も一般に浸透する事はあまりないと考えています

アパレル側からすると
「都合の悪い事実」なので、
あまり広めたくないからです

クリーニング店側からしても、注意喚起以外の目的で、
わざわざ
「出来ないこと」をPRする必要はないため、
結果として消費者に伝わらず、損害を受けるのはいつも消費者です


2016年の法改正で、日本の品質表示は海外の表示と統一され
同時に、
「アパレル側が付けたいと思う表示」ではなく、
「衣類の特性に合わせた表示」を付ける事が義務付けられました

しかし、法改正以前の衣類に関しては、旧表示のままです
そして、そのようなイタリア製の衣類の多くに、
「海外の表示では『水洗い:◎』だが、日本の表示では『水洗い:×』」
・・・と言う表示が、非常に多く見られます


これは、法改正以前に、
「日本の消費者は神経質なので、
少しの縮み・色落ちでもクレームになる。
そのため、水洗い出来ないと言う表示にしておこう」

と考えて付けられたのでは・・・
と、クリーニング業者からすると思える表示です


法改正で、そのような表示を勝手には付けられなくなったため、
現在は基本的に
「海外の表示」=「日本の表示」となっています

ただし、海外から個人輸入した衣類を購入した場合など、
まだまだ
「信用出来ない表示」は世の中に溢れている、と感じます
(手書きの表示・見た事のない表示・そもそも表示がない等)


イタリア製の衣類は、独特の色合い・縫製が魅力で、
今後
「ファストファッションは、もう着たくない」
と考える層に広がって行くのでは、と思います

イタリア製以外にも、
今後
「〇〇で人気のファッションが、日本初上陸!」と言う事は、
毎年のようにあるでしょう


ただし、水洗い出来ない服である場合、
「着ている時に汗をかくと、リスクなしに取れない」
・・・と言う事を十分に理解した上で、購入するようにして下さい